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密航のち洗濯 ときどき作家(宋 恵媛 望月 優大)2024年06月09日 21時45分23秒

密航のち洗濯 ときどき作家(宋 恵媛 望月 優大)
ヘビー級のノンフィクションでした。
内容もいいのですが、タイトルとカバーデザインも秀逸ですね。

『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ・文藝春秋)2024年06月09日 21時42分22秒

『そして、バトンは渡された』
こういう本を読みました。
映画も見てみたいな。

力道山未亡人(細田 昌志)2024年06月03日 21時10分31秒

力道山未亡人(細田 昌志)
第30回小学館ノンフィクション大賞受賞作です。
あまりの面白さに一気読みしました。
何がそんなに面白かったのでしょうか? ちょっと本書を振り返ってみましょう。

まずタイトルがいい。『力道山未亡人』ですよ。
サブタイトルなしでも、これがどういう本なのかが一発で分かります。
最近の本はサブタイトルが異常に長かったりして、本の魅力をサブタイトルで一生懸命、説明しようとしたりします。
あまり長いと白けたりするんですが、本書はその真逆を行っています。

とは言え、力道山です。下手したら今の若い人たちは知らないかも。
ぼくだって物心ついたときには、すでに力道山は他界していました。
でも、街頭テレビとか、空手チョップとか、、、伝説として力道山の名前は今も生きているのかな。
それとも、若い人は、この本で力道山の人としてのスケールに驚いたり、アントニオ猪木との類似性に驚いたりするかもしれません。

さて、筆者の細田さんが分厚い取材によって力道山夫人の人生を描いていきます。
前作の『沢村忠に真空を飛ばせた男: 昭和のプロモーター・野口修 評伝』でも、深い取材によって大著を仕上げていました。
この作品もめちゃめちゃ面白く、未読の方にはぜひおススメしたいです。

インタビューする力、資料を掘り起こす力、そして情報を編集する力。それらをベースにして、未亡人の人生を活写する筆の力は見事としか言いようがありません。
新婚半年で夫に先立たれ、22歳で5つの会社の社長に就任し、30億円の負債を背負い、4人の子どもの母親になったのですから、こんな人生はまず無いでしょう。
そのドラマを精緻に、そして迫力満点に描いています。

この本は、プロレス好きにはたまらないかもしれませんが、プロレスに関心のない人にこそ読んでほしいです。
なぜなら、本書は、ある一人の女性の数奇な運命を描いた大河ドラマになっていて、彼女が力道山の妻であってもなくても、ノンフィクションの面白さがすべて詰まった1冊になっているからです。

こういう本を読むと、だからノンフィクションはやめられないよね・・・と思います。

さて、細田さんは『沢村忠に真空を飛ばせた男』で講談社NF賞を受賞しています。
ところが、本書は連載の機会がなかったといいます(なので、小学館NF大賞に応募した)。
ノンフィクション、冬の時代と言いますが、いくら何でもそれはどうなんでしょうか?
実はぼくも『運命の子 トリソミー』で今から10年前に小学館NF大賞を受賞し、次回作の『呼吸器の子』がなかなか出版が決まらなかったんですよね。
出版社さん、もっとがんばってくださいね。

なお、本書はカバーデザインもいいですね。
みなさんにおススメします。文句なしの傑作です。

日本小児外科学会で福岡に行ってきました!2024年05月31日 19時36分21秒

久しぶりに日本小児外科学会に参加してきました。

ぼくが大学を辞めた18年前と大きく変わったことと、あまり変わっていないことの両方がありました。

小児がんの治療後 QOL は昔からの課題です。これは変わっていませんね。

比較的新しい話題として、
短腸症候群の患者に対する GLP-2 アナログの応用が広がっていること、
リンパ管腫に対して mTOR 阻害薬の効果の報告が増えていること、、、などです。
医学の進歩は素晴らしいと思いました。

少子化の時代に若い小児外科医をどう育てるか、これも大きな課題で、施設の集約化は昔からずっと言われています。

千葉市で言うと、大学とこども病院と海浜病院は、距離がかなり近いですよね。
患者さんにはいいことかもしれませんが、医療の効率とか、小児外科医を育てるという面で考えると、少し課題が残るかもしれません。

しかしこういうのは、小児外科医が改革案を出しても、すでにある施設を無くすわけにもいかず、実現は簡単ではありません。
実際、昔から延々と議論されています。

Cardinal Glennon 小児病院(セントルイス)は、240キロの範囲をカバーしているそうです。
これは日本で言えば、九州全域になります。
ここでは一人の小児外科医が1年間に600件くらい手術します。
ぼくは、19年間で1800件の手術を経験しました。
えらい違いですね。

個人的には、久しぶりの学会参加だったにも関わらず、多くの人に声をかけていただきました。
初対面の若い人からもたくさん声をかけられました。
「本、読んでます」とか「エッセイ、読んでます」とか。

正直、うれしかったです。もう「過去の人」になっているのかと思っていたので。

また、明日からクリニックの診療をがんばります。

小説編集者の仕事とはなにか? (星海社新書・唐木 厚)2024年05月26日 21時47分07秒

小説編集者の仕事とはなにか? (星海社新書・唐木 厚)
本書は若い編集者に向けて書かれた作品かもしれませんが、「本」というジャンルに興味がある人であれば、誰が読んでも興味深いのではないでしょうか?

筆者は講談社の編集者。もう第一線では仕事をしていないようですが、これまでたくさんの業績を上げてきた方です。
その専門は「新本格ミステリ」。
ぼくは、中学・高校で「古典本格ミステリ」を好んで読んでいました。
ですので、「新本格」には詳しくありません。
でも十分におもしろく読めました。

京極夏彦さんとの出会いとかは、事実は小説より奇なり、そのもので、こんなふうに新人作家が誕生するのかと驚きました。
また、メフィスト賞をめぐって編集者たちが熱く燃えていたのも読んでいてワクワクしました。

2000年頃にインターネットが常時接続の時代になり、2010年頃にスマートフォンが広がり、私たちの世界は書き言葉で溢れている・・・という指摘はまったくその通りだと思います。
そして、この書き言葉の限界について触れた最終章は、編集者の仕事の舞台裏とは無関係なのですが、大変興味深かったです。

本がなぜ読まれなくなったのか? 
若い人たちは、毎日ものすごい数の「言葉」に接し、また書いています。
どこかでブレークスルーを見つけないと、本は万人の娯楽ではなくなっていくかもしれませんね。

楽しく読ませていただきました。

『開業医の正体』(中公ラクレ)6刷です!2024年05月25日 19時18分40秒

『開業医の正体』(中公ラクレ)6刷です!
6刷になりました! (クリックで拡大します)

昨日は毎日新聞、本日は朝日新聞に半5段で広告が出ました。

Amazonは現在、機能が麻痺していて、売れ筋ランキングが一昨日から更新されていません。
よって、順位は不明ですが、たぶん・・・売れていると思います。(希望的観測)

ぜひ、応援してください。未読の方はぜひ、どうぞ。

家で死ぬということ ひとり暮らしの親を看取るまで(石川結貴)2024年05月23日 19時46分24秒

家で死ぬということ ひとり暮らしの親を看取るまで
これは大変すばらしい作品でした。
在宅で高齢者が死を迎える。それって今の時代、全然珍しいことではありません。
いくらでもあるテーマです。
それをいかに描くか。この本は見事なドラマを成り立たせていました。

妻に先立たれた高齢のお父さん。めちゃめちゃ頑固で、医療や介護が大嫌い。
著者が心配して、いろいろなケアの手配をしたり、クリニック・病院に連れて行っても、断固我が道を行きます。
要は、「俺は元気だ! 大丈夫だ! 医者なんて、介護なんて必要ない!」

ですが、お父さんは末期の腎不全なんですよね。
ひとり暮らしのお父さんを、著者は全力で支えます。
お父さんに対して、腹も立つし、意見がぶつかって喧嘩もするけど、やっぱりお父さんが好きなんですよね。
読んでいて、ホロリとしてしまいます。

最後、お父さんは自宅で亡くなりますが、それは平穏死とか、自然死とか、そういう気楽なものではありませんでした。
医者や看護師やヘルパーさんや、あるいは近隣の方々を含めた総力で、人は自宅で死ねるのです。
けっしてやさしいことではありません。そういうことが描かれていました。

筆者は、(当然ですが)文章もうまく、お父さんのキャラを的確に表現しており、在宅死に至るまでの困難をつぶさに描きます。
その筆運びは見事としか言いようがありません。
言ってみれば「ありきたり」のテーマに対して、ここまでおもしろいドキュメントを書けるというのは、並大抵の筆力ではないと思います。

ただ、途中に解説が出てきます。介護施設とは何かなどの説明。
こういう情報が読者に必要なのは分かるんですが、ちょっと話の腰を折られるんですよね。
そういう解説は、巻末にまとめて掲載してもよかったのでは?と思います。

本作品は、今年度の大宅賞の候補作。
いや、受賞作に選んでもよかったのではないでしょうか。それくらい優れた一作です。
おススメします。みなさんも読んでみてください。

毒の恋 7500万円を奪われた「実録・国際ロマンス詐欺」(井出智香恵)2024年05月18日 21時27分46秒

毒の恋 7500万円を奪われた「実録・国際ロマンス詐欺」(井出智香恵)
いや、これは強烈でしたね。
国際ロマンス詐欺の体験記です。
終章では、なぜ騙されたかを自己解説していましたが、、、うーん、やっぱり「恋は盲目」ということなんでしょうか?
実際に一度も会ったことのない外国人に7500万円を騙し取られるって・・・。
一度に7500万円ではなく、数十万〜数百万円を、何度も何度も送金してしまうんですよね。

こっちは読みながら「早く気づけ〜〜」と思っているわけですが、筆者は全然その気配もなし。
徐々に泥沼にハマると言うよりも、最初からハマったという感じでした。
借金返済、大変だと思いますが、この本と漫画がベストセラーになってくれるといいですね。

文章は上手とは言えませんが、騙される側の迫力がヒシヒシと伝わる力作でした。
面白かったと言ったら、不謹慎ですね。
そういう一作です。

61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地のお医者さん」はじめました(香山リカ)2024年05月15日 22時20分10秒

61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地のお医者さん」はじめました
いや、とてもおもしろかったです。
香山リカさんは、ぼくより1学年上。
ぼくも文学青年で精神科医になりたくて医学部に行ったのですが、小児外科医になってしまいました。
香山さんはぼく以上に文系だったようで、でも、理科も好きで、いろいろあり、望まなかった医学部に行き、精神科医になりました。

ある程度年齢が行ってから、人生の進路を変更するってものすごくエネルギーを使うんですよね。
医療過疎地で医者をやるって、なかなかできることではありません。
中村哲先生の「一隅を照らす」という言葉に導かれたようですね。
ぼくもこの言葉が大好きです。

とての楽しい本でした。
穂別での生活やアイヌの人たちのことをもっとたくさん書いてほしかったな。

ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢(松岡かすみ)2024年05月12日 15時32分24秒

ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢 (朝日新書)
日本の風俗嬢が、最近では海外へ行って稼いでいるそうです。
オーストラリアとか、ニュージーランドとか、アメリカとか、カナダで。
就労ビザを取得するわけでは当然なく、観光ビザで短期に渡航するのです。
そんな実態があるのかと驚きながら読んでみました。
筆者は文章も上手く、6人の風俗嬢に話を聞いていきます。

とくに1番目の女性の話が抜群に面白かったです。
惜しいのは、2番目以降の女性の話が、根本の部分で同じ話だったことかな。

第2部は考察です。なぜ彼女たちは海を渡るのか。
理由は別に驚くことではなく、日本では食えないからです。
要は海外の方が儲かる。
つまり出稼ぎに行く時代になってしまったのですね。
『サンダカン八番娼館』の時代です。
かなり前に読んだ本で、AV嬢ではもはや高給は取れないと書かれていましたので、なるほど、そんなもだろうと納得しました。

ちょっと気になったのは、「風俗をやっているから心を病むのではなく、心を病んだ女性が風俗をやる」という記述。
うつ病やパニック障害やひきこもりの人は、普通の仕事はできないけど、風俗ならできる・・・それってホントですか?
筆者はうつ病やパニック障害に苦しんでいる人を見たことがあるのかと、ちょっと疑問を抱きました。

おもしろい本なんですが、日本が貧しいから出稼ぎに行くっていうまとめ方は、少し当たり前すぎる感じがします。
1番目の女性の話を突破口にもっと、深掘りしていけば違う世界が見えたような気がしないでもないです。

ただ、ルポとしては十二分に楽しく読めました。