親友は山に消えた(小林元喜)2026年03月20日 15時08分32秒

親友は山に消えた(小林元喜)
「さよなら、野口健」がメチャおもしろかったので、著者の第2作も読んでみました。
タイトルにこの本の内容がすべて表れています。
また、カバーの装幀を見れば、なぜ亡くなったかも分かります。
本の内容とは関係ありませんが、この本はカバーもいいし、カバーを取っても表紙が秀逸だし、サブタイトルなしで勝負しているところもいい感じです。

さて、本書には3つの優れている点があります。
まず、主人公が無名の人にもかかわらず、強烈な個性を放ってぐいぐい読ませる点です。
著名人の評伝などは、おもしろくて当然だし、本もよく売れます。
ですが、無名の人の生涯を描くというのは、作家にとって冒険になります。
沢木耕太郎さんの数々の作品の中で、ぼくが最大に評価しているのは「深夜特急」ではなく、自分の父親を描いた「無名」です。
無名の人間を描くと、その作家の本当の技量が明らかになります。
そういう意味でこの本は成功しています。

優れている第2点は、文章の力です。
ときに過剰の部分もありますが(特に、あとがき)、基本的に大変に文章に力があります。
豊かに多彩に語っていますし、表現する力強さがあります。
こうした部分はトレーニングでうまくなる面もありますが、基本的には才能なんだとぼくは思っています。

3つ目が、自分語りの奥深さです。
筆者は、親友と、友だち関係であると同時に強烈なライバルなんですね。
青春の時期を「何者か」になろうと共に懸命に足掻くわけです。
だから親友が「成功」すると、喜ぶことができない。
猛烈な嫉妬を感じてしまいます。
そこを赤裸々に書きます。もっと言えば、自分の内面を深く掘っていきます。
だから、この本は「親友の話」であり、「自分を描いた本」なんです。
そしてそれが、上滑りすることなく表現されていて、読み終えてみれば「あいつと私の関係」の話ということがよく分かります。

極めてすぐれたノンフィクションが誕生しました。
小林元喜さん、おめでとうございます。書いてよかったですね。

みなさんにも、お勧めします。