アフリカから来たランナーたち 箱根駅伝のケニア人留学生(泉 秀一)2026年05月13日 22時34分11秒

アフリカから来たランナーたち 箱根駅伝のケニア人留学生(泉 秀一)
箱根駅伝のテレビ中継を見ていると、1つの区間だけにケニアのランナーが走って、区間新記録を出したりしますよね。
2つ以上の区間に出られないのは、たぶんそういうルールなんだろうと分かりますが、ケニアから来たランナーはどんなバックグランドを持っているのかな。
そう思う人は多いでしょう。ぼくもそうでした。そこで本書を読んでみました。

筆者は、まず文章が上手ですね。
語り口が豊かです。ぼくは表現力が貧困なので、こういう文章はちょっと書けないかも。
読者を惹きつけるストーリーテリングの力があります。
そして取材もしっかりしています。
ケニアには3回行ったようですが、その期間はどのくらいだったのかな。
かなりボリュームのある聞き取りです。

ただ、難を言えば、テーマはよくわかるのですが、本全体を貫く背骨みたいなものがほしかったです。
言ってみれば、オムニバスを読んでいるような感じ。
そのこと自体が悪いわけではありませんが、なぜ彼ら彼女らがケニアから来るかというと、それは「出稼ぎ」だからです。
こういうと身も蓋も無いのですが、そういう実態が本書の最初ですぐに明らかになるので、そこから先の展開が重たくなるのですね。

幻の高校を求めて取材する章では、筆者にとっては興味のあることかもしれませんが、読者は置いてきぼりになる感じでした。
また、終盤の20%くらいは、ルポではなく、説明や考察になっており、その内容自体は首肯できるものなのですが、ノンフィクションとしてはやや弱いかなと思いました。
やはりノンフィクションは「描写」しないと。

現在、ノンフィクション冬の時代はますます進み、本書は新書なのですが、今後も単行本ではなく、新書の中にノンフィクションが増えていくと思います。