キャスターという仕事 (岩波新書) 国谷 裕子2017年01月29日 22時39分04秒

キャスターという仕事 (岩波新書) 国谷 裕子
「クローズアップ現代」のキャスターを23年間つとめた国谷さんの手記です。
岩波新書らしく硬い内容と文章でした。
テレビ番組の舞台裏みたいな話はあまり面白くなく、テレビとは何か? インタビューとは何か? といったジャーナリズム論が大変読み応えがありました。

国谷さんはテレビの危うさを次の3つと考えます。
①「事実の豊かさを、そぎ落としてしまう」
②「視聴者に感情の共有化、一体化を促してしまう」
③「視聴者の情緒や人々の風向きに、テレビの側が寄り添ってしまう」
大変鋭い指摘だと思います。
そして国谷さんは「フェア」であることにとてもこだわり、インタビューでは徹底的に質問を重ねます。
だから安保法制で菅官房長官に食い下がったのは、「右」とか「左」とか、あるいは「反権力」とか「親権力」とか、そういうこととはまったく関係がない。
ジャーナリストとして、徹底的に質問するという態度を貫いている訳です。

そしてそのためには国谷さんはものすごい準備を毎日のように重ねて来たのです。
「クローズアップ現代」が生放送だったとは知りませんでした。
準備に準備を重ね、生放送でゲストから話を深く聞き出すのは並大抵のことではありません。
努力の人だったということがとてもよく理解できました。

彼女は帰国子女で、どうやら思考回路はアメリカ流のようです。
アメリカという国には欠点も多々ありますが、日本が見習わなくてはいけないのはジャーナリズム・スピリットだと思います。
国谷さんはそういった良識あるメディアのリベラリズムを持っていたのでしょう。

今にして思えば良い番組でした。もっと見ておけばよかった。
なお、国谷さんはNHKの職員ではないというのも初めて知りました。