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よりみち部落問題 (ちくまプリマー新書) 角岡伸彦2024年12月25日 21時29分51秒

よりみち部落問題 (ちくまプリマー新書) 角岡伸彦
角岡伸彦さんの作品。
被差別部落出身者として、「これまで」と「これから」を語っていきます。
ちくまプリマー新書から出版されたのは大事ですね。
ぜひ、高校生や大学生に読んでほしいです。
さて、この本は部落問題を語っていくとともに、角岡さんがどう生きてきたかも綴っています。
半生記にもなっているわけですね。これまで角岡さんはライターとして、多くの部落出身者・関係者に取材して書いてきましたが、自分のことは、断片的にしか書いていなかったと思います。
知らない話が次々に出てきて(特に学芸員の時代)、大変興味深く読みました。

文章は例によって大変洗練されていて、ぼくが真似しようと思っても真似できないうまさです。
そして、分かりやすい文章なんですが、内容は案外高度というか、部落問題の難しい領域にまで入っていっており、平易な本ではありません。
とくに第4章の部落問題の未来を語る部分は大変にクオリティーが高く、同時に読者に考えることを求めていますので、読む方はじっくりと時間をかけることになります。

部落問題とは結局何なのか? ぼくが説明しても意味ありませんが、それはルーツに対する差別です。
ルーツは消えないので、部落問題はなくならないし、なくなるのが難しいと言えます。
だから、角岡さんはどう残るべきかを論じています。
部落問題だけでなく、すべての差別問題で最もいけないことは、「差別がない」と考えることです。

差別の本質は最終的に経済に行き着くとぼくは見ていますが、もっと簡単に言えば、差別されることのしんどさは「痛い」ということにあります。
人の足を踏んでおいて、自分は「踏んでいない」と言うのは許されないでしょう。それと同じです。
出自を問題にして差別することは、人として最も恥ずかしいことです。
ここの部分にわれわれは向き合わないといけないと思います。

この本のタイトルは「よりみち」ですが、実は部落問題に真正面から取り組んだけっこうヘビー級の作品です。
若い人がどう読むのか、大変興味があります。
みなさんもぜひ、人ごとにしないで、正面からこの問題について考えてみてください。
おススメします。