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赤ちゃんをわが子として育てる方を求む(石井 光太)2023年04月18日 10時42分51秒

赤ちゃんをわが子として育てる方を求む
菊田昇医師による赤ちゃんの斡旋「事件」は、幼い頃のぼくの記憶に残っています。
当時は、人工妊娠中絶が8ヶ月まで可能だったので、7ヶ月の赤ちゃんを産ませる形で中絶すると、産声を上げたりするのです。
こういうとき、産科医は新生児をを水に沈めたり、水に濡れた布で顔を覆ったそうです。

この話は作り話ではなく、ぼくが昭和62年に医師になったとき、重症新生児を外科手術で先輩の医師が助けました。
その話を、知人の産婦人科医に話したら、「そんなことしてどうするの? 千葉に田舎に行けば、そういう赤ちゃんが生まれたら濡れたティッシュを顔に乗せられておしまいだよ」と言われて強いショックを受けました。
新生児医療において産科医は「敵」になりうるとこのとき思ったものです。

菊田医師は、望まれない出産で生まれてきた赤ちゃんを、養子として斡旋することを思い付きます。
ただ当時はそうした法整備がなかったので、養親に出生証明書を偽造して、養親が産んだように体裁を整えたのです。
そうしないと、産んだ親の戸籍に記録が残ってしまうからです。

菊田医師は罰金刑となりますが、彼が考えていたことはよく理解できます。
現在では、特別養子縁組制度ができています。

さて、作者はなぜこの本をフィクション(小説)として書いたのでしょうか?
石井さんはめっちゃ筆が立ち、ストーリーを語れば天下一品です。もともと小説に向いているのかもしれません。
でも、この本の重いテーマを考えると、ノンフィクションとして、つまらない本であってもいいから、事実のみを読者に伝えて欲しかったなと思います。

ま、単にぼくがノンフィクション好きだからかもしれません。
特別養子縁組の話はこれからもしばらく、僕としては個人的テーマとして追いかけるつもりです。
みなさんも、ぜひ、読んでみてください。