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清六の戦争 ある従軍記者の軌跡(伊藤 絵理子)2021年12月15日 23時37分55秒

清六の戦争 ある従軍記者の軌跡
これは面白い本でした。
筆者は毎日新聞の記者。いや、記者ではなく、執筆当時は「情報調査部」に配属されていたようです。
その伊藤さんの曽祖父の弟が、清六さん。彼は(いまの)毎日新聞社の記者だったのです。
伊藤さんは、もちろん会ったこともない清六さんの人生を追っていきます。

従軍記者として何を体験し、どういう記事を書いたか。あるいは書かなかったか。
まず驚くのは、よくぞここまで調べることができたなという点です。これはもう、本書を読んでもらうしか説明のしようがありません。驚異的だとしか言いようがありません。

そしてその調査を通じて、戦時中の新聞がいかに軍に屈服させられ、真実とは程遠い報道を強制させられたかが、よく分かります。
しかしそれを軍国主義下の報道弾圧と結論づけて終わりにはできないはずで、そういった状況にあって記者個人はどう書くかが、現代でも問われるのではないでしょうか? だから伊藤さんもこの本を世に出したのでしょう。

本書は170ページほどの作品ですが、中身の濃さは一級品のノンフィクションであり、調査報道です。
偶然出会った本ですが、これは実に見事な作品でした。
みなさんにぜひ、おススメします。