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筑紫哲也『NEWS23』とその時代(金平 茂紀)2021年11月17日 16時56分31秒

筑紫哲也『NEWS23』とその時代
NEWS23 を軸にした筑紫哲也さんの回想録です。
評伝ではないので、はっきりした物語の軸があるわけではなく、メモやエピソードを集めて整理したような構成になっています。
やや内省的な作品と言えるでしょう。
はっきり言って、業界内部の話も多く、一般的にはまったく知られていない人も多数出てくるので、少しとっつきにくい面もありました。
また、途中まで述べて「これ以上は書かない」とやめてしまう文章が多々あり、消化不良が残りました。
それでも興味深い記述は多数あって、引き込まれるように読みました。

実はぼくはあまりNEWS23を見たことがありません。
22時から久米宏さんのニュースステーションを見ていました。久米さんはこの仕事を引き受けるときに、死ぬ(殺される)かもしれないと思ったそうですが、久米さんの政権批判は実に鋭いものがありました。
自民党の梶山静六さんがスタジオに来た(生放送)とき、久米さんが「スポンサーのトヨタに圧力をかけたって本当ですか?」と暴露話を持ち出し、梶山さんがフリーズしたのをよく覚えています。
そういう面からすると、筑紫さんはそこまで政権に厳しくなかったし、あまり毒舌というのもなかった。
リベラルの心情はしっかりと思っていたのは間違いありませんが、その一方で多様性を大事にする人だったので、自分と異なる意見も大切にしていたようです。
いつか筑紫さんの書いた本(「旅の途中」だったかな)を読んだ時、歴代の自民党の総理候補と親しく付き合っていたという記述を読んで、ああ、政治記者ってこういう感じなんだなと思ったものです。
(ただし、森喜朗だけは総理になるとは思わず、交際がなかったらしい)
22時から久米さんの毒舌を聞いてしまうと、NEWS23 ってちょっと「ヌルい」かな・・・と思ってしまうんですよね。それであまり見なかったのだと思います。

筑紫哲也さんには朝日新聞の同期として本多勝一さんがいます。
以前、筑紫さんは、この世で絶対に論争したくない人として2人の名前をあげました。もちろん負けるからです。
それが立花隆さんと本多勝一さん。
立花さんはこの世を去ってしまいました。ぼくは先日、週刊読書人に書評を書きました。
筑紫さんも肺がんでこの世を去りました。
本多さんも最近は本を刊行していません。大好きな3人ですが、時代は移ろい、時は流れるとしみじみ感じます。
筑紫さんのファンには必読の1冊だと思います。オススメです。