面白くて一気に読みました。
筆者はジャーナリストなので、文章も上手で、外(自分から見える世界)も内(自分の心の中)もしっかり描けていました。
やや分厚い本で冗長な部分もありましたが、1つの作品として完成していると思います。
さて、筆者は食道がんのステージ3。ぼくが研修医の頃だったら、助かる見込みはないですよね。
手術しても再発して・・・という経過です。しかし今は、放射線療法と化学療法のエビデンスが蓄積されていますから、どういう治療が最も助かる確率が高いのかデータとしてきちんと示されています。
結局、著者は手術を選びませんでした。抗がん剤治療と放射線治療を選択します。これは、手術と抗がん剤という標準療法に比べて生存率が低いものです。
なぜ、それを選んだか?それは術後のQOLがとても悪いと判断したからです。
仕事ができなくなるくらいなら、少しくらい生存率の高い手術は拒否するということです。
それも一つの生き方でしょう。ぼくもそういう選択をするかもしれません。
この本を読んで驚いたことは、東大病院の食道外科が患者に対してちゃんとしたムンテラ(説明)をしないことです。
ぼく自身の経験と照らし合わせるととても考えられません。
小児がんと違って、大人の癌は患者が多いので、とても一々説明できないのかしれません。
それから、手術を断る筆者に対して医師が全然引き止めないこと。これも驚きでした。
小児医療では、医者が子どもの親代わりみたいになる場面がよくあります。
パターナリズムの一種かもしれませんが、こうした医師の姿勢によって子どもが治っている部分もあります。
しかし成人の医療って、本人が「この治療を受けよう」と思わない限り、放っておかれる面があります。
自らを助けようとする者を助ける・・・という感じです。
筆者がちょっと誤解しているかな?と思ったのは、セカンドオピニオンについてです。
セカンドオピニオンを求めると医者の機嫌を損ねると思っている人は多いように感じますが、そんな時代はもうとっくに終わっています。
セカンドオピニオンは全然問題なく受けることができますよ。
筆者の闘病はまだ終わっていないようですが、完治されることを心からお祈りしています。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。