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デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場(河野 啓)2021年02月06日 12時58分38秒

デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場
開高健NF賞を受賞し、現在大ベストセラー中の作品です。
作者は、文章も大変うまいし、物語の転がし方もうまい。一級の書き手です。
しかし実は本職は映像作家のようです。
この本はどう評価していいか分かりません。
面白い本ですが、主人公の栗城さんに、あまりにも人としての魅力がなさすぎるからです。
筆者の視線も基本的には冷たいもの、突き放したものではないでしょうか?
そうすると読む方は、感情移入できないし、なぜ、筆者が「この人」を描くのかという疑問が湧きます。
そういう意味で評価が難しいですね。

そして筆者は本の前半では映像作家として栗城さんを取材対象にしていました。共に番組を作った当事者な訳です。
ところがある時点で決別し、栗城さんと離れます。
この距離感の分かりづらさは、そのまま本の完成度につながってしまったような印象を受けます。

タイトルに関して一つ言っておくと、サブタイトルがまさに本の言いたいことだと思うのですが、「デスゾーン」というタイトルはちょっと違うなと感じました。

さて、筆者の河野さんは小学館NF賞も受賞しています。
今回も受賞して素晴らしいと思うのですが、なぜ賞に応募したのでしょうか?
もし、小学館NF賞を受賞していても、作品発表の場がなくて開高賞に応募したのであれば、この業界はきついなと思います。
ノンフィクションを書ける場を出版社は作っていって欲しいと思います。