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AMETORA(アメトラ) 日本がアメリカンスタイルを救った物語 日本人はどのようにメンズファッション文化を創造したのか? デーヴィッド・マークス (著), 奥田祐士(訳)2019年06月28日 22時16分03秒

AMETORA(アメトラ) 日本がアメリカンスタイルを救った物語 日本人はどのようにメンズファッション文化を創造したのか?
ジャーナリストの森健さんが2017年で最も面白かったノンフィクションと言うので、読んでみました。

まずこの本は、マークスさんが英語で書いてアメリカで出版したものを翻訳したのか? それとも、日本人に向けて英語で書いてそれを奥田さんが翻訳したのか正直なところ分かりませんでした。
なんでそんなことを言うかというと、本書の文章が日本語として極めて上質だからです。
奥田さんの翻訳がめちゃくちゃうまいのか、マークスさんが、日本語のシンタックスで英語を書いたから日本人に分かりやすい文章なのか、ま、そのどちらかでしょう。
翻訳文を読んでいるという感覚がまったくありませんでした。

さて、ぼくは東京のはずれに生まれ育ち、昭和40年代に少年期を過ごしました。
現在に至るまで、ファッションのことなどまったく考えたことはありません。で、当然知識もない。だから本書に出て来る固有名詞に関してまったく分からない語もたくさんありました。

しかしそんなぼくでも読んでしまう。なぜでしょう。
それはよく考えてみると、ファッションというものは本人の自覚とは無関係に、人間にとってなくてはならないものだからです。
そしてもう一つ。戦後の何もない時代・・・つまり大学生が私生活でも学ランを着ていた時代から、ファッションは確実に進歩していて、ファッションを辿ることは戦後文化を辿ることになるからです。

日本人はなんとなく美的センスに欠けた人種に思えてしまいますが、戦後文化の中で音楽とか車とか家具とか食事とかよりも、実はファッションに強い関心を持ってきたということが本書で浮かび上がってきます。
そのことを、マークスさんは豊富な文献と分厚い取材で深く物語っています。
戦後日本文化をこれほど饒舌に語った本はちょっと見当たらないと思います。

ちなみにこの本はカバーをめくっても、本体にちゃんとイラストが描いてあって大変かわいい作りになっています。
こういう本は資料性も高いし、文化遺産にもなります。
良い本に出会いました。

なお、蛇足ですが、本の途中にホールアースカタログの話が出てきます。
スティーヴ・ジョブズの「あれ」ですね。
Stay hungry, stay foolish!

戦後日本の文化史やファッション史に興味がある人は必読だと思います。