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白血病は治る時代2019年03月06日 22時38分11秒

競泳の池江さんが
「思ってたより、数十倍、数百倍、数千倍しんどいです。三日間以上ご飯も食べれてない日が続いてます」
とツイッターで述べています。

白血病は治る時代になりました。
ただ残念ながら治癒率100%ではありません。80%以上と言った感じです。
とにかく水泳のことは一切忘れて、後遺症無き生還を果たして欲しいです。

白血病はあと20〜30年すれば、治癒率100%になるかもしれません。
しかし闘病の苦しさは、これからも続くと思います。
池江さん、確かに治療はきついです。
でも、スポーツにたとえるなら、ハードルを1個1個超えていってください。
一気にゴールしようとすると苦しくなります。
目の前の1歩の積み重ねが勝利につながります。

いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち(38)2019年03月07日 12時29分08秒

連載第38回目の原稿を書きました。
どんな重い障害を持った胎児でも、命は大切に育まなければなりません。
しかし、場合によっては人工妊娠中絶を選ばざるを得ない命もあります。
そういうことを書きました。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190207-OYTET50014/
もしよかったら読んでみてください。

千葉大学に帰る2019年03月14日 22時48分46秒

昨日、千葉大学の西千葉キャンパスへ行ってきました。
第8回千葉こどもの心教育医療研究会に招かれて、講演を40分ほどおこなってきたのです。
参加者は30人ほどでしょうか。
教育関係者・小児科医・精神科医・千葉市教育委員会の方・千葉市障害福祉課の方など、多士済々です。
ぼくの演題は「自閉症児と母の17年の人生をたどって学んだこと」。
ええ、もちろん、自著「発達障害に生まれて」を書いて学んだことを話したのです。

ぼくの話は「障害をいかに受容するか」がテーマなので、ちょっと場違いかなと心配したのですが、終わってみればいろいろな方からお誉めの言葉をいただき、ご挨拶とか名刺を頂いてしまいました。

講演の内容が好評だったことも嬉しいのですが、ぼくにとっては千葉大に帰ってこれたことが本当に嬉しかったです。
ぼくは1981年に千葉大に入学して、83年の春まで西千葉キャンパスで一般教養を学んでいました。
それ以来、36年ぶりに西千葉キャンパスに足を踏み入れたことになります。

ぼくが開業医になった理由はこれまで何度も書いていますが、大病をして脳外科の主治医の先生からドクターストップをかけられたからです。
それまでは医学部小児外科講師として、臨床・研究・教育をやっていました。
この3つができる大学の仕事は自分にとって天職と思っていました。
しかし病によってすべてが水泡に帰しました。
いつの日か、何かの形で大学に帰りたい。
大学に帰って「講義」をしたいとずっと夢見ていました。
その夢がようやくかなったのです。
大学を辞めて13年目の春でした。

次の夢は何でしょうか?
やはり医学部で講義をすることです。
その日が来るまで地道に研鑽を積んでいきましょう。

「コトノネ」のインタビューを受ける2019年03月16日 17時32分00秒

運命の子
本日診療が終わってから雑誌「コトノネ」の取材を受けました。

コトノネとは障害者の就労を応援する会社の雑誌です。
http://kotonone.jp/index.php

なぜ、ぼくに白羽の矢が立ったかというと、「発達障害に生まれて」がものすごく分かりやすい本だったからだそうです。
編集部さんは、これまで何冊も発達障害に関する本を読んできたそうですが、すっと頭に入る本はまず無かったとのこと。
でも拙著は大変よかったと誉めていただきました。

1時間以上インタビューを受けたのですが、実は話題の大半は「運命の子 トリソミー」について。
この本は、発売されて5年が経つのに未だに反響があります。
昨年、3刷り1万部になったことはここでも書いた通りです。
ぼくが障害児の受容について根本から考え直すことになった1冊ですから、やはり評価していただくのはとてもうれしいです。
未読の方はぜひ、手に取ってみてください。

https://www.amazon.co.jp/dp/4093965277

コトノネにぼくのインタビュー記事が掲載されるのは5月20日だそうです。
またご報告しますね。

「つなみ」の子どもたち 作文に書かれなかった物語 (文春文庫)森 健2019年03月17日 07時30分06秒

「つなみ」の子どもたち 作文に書かれなかった物語
これまでの長い読書歴で、単行本で読んだ本を文庫本で買い直したのは4冊だけです。
『精神と物質』(立花隆)
『こんな夜更けにバナナかよ』(渡辺一史)
『絵はがきにされた少年』(藤原章生)
そして本書が4冊目になります。

東日本大震災をどう描くか、ジャーナリストやノンフィクション作家であれば、誰もが考えたはずです。
本という小さな枠の中に、あの大津波をどうやって描くのか?
もしかしたら、映像の方が震災の全貌を表現できるかもしれません。
しかし映像は津波それ自体を視覚化できても、人間を表現することはできない。個人の生活とか、地域のコミュニティーを伝えることはできないんです。

そこで森さんが考えた手法が、子どもに作文を書いてもらうという方法です。この方法は、大震災を描くだけでなく、子ども自身を描き、家族を描き、地域社会を描いていくことになります。

言わば、紙という世界が、リアルの世界にまで広がり、復興の一助にまでなっている。子どもたちの、家族たちの心の再生に役立っているのです。
ある意味で、ジャーナリストの仕事が、それを超えていったと言えます。1冊の本が様々なムーブメントを引き起こしたのです。

ノンフィクション史に残る傑作です。未読の人はぜひどうぞ。

9つの脳の不思議な物語 ヘレン トムスン2019年03月18日 20時51分09秒

9つの脳の不思議な物語
不思議な脳の働きをした9人に、科学ジャーナリストが会いにいくというノンフィクションです。
オリヴァー・サックスを彷彿とさせます。
これまでの人生のすべての日を記憶しているボブ。
自宅の中で迷子になる究極の方向音痴のシャロン。
色盲でありながら人間にオーラを見るルーベン。
悪人から聖人に一夜で人格が入れ替わったトミー。
幻聴を譜面に起こす絶対音感の持ち主のシルビア。
虎に変身する幻覚を持つマター。
この身体も心も自分ではないと感じるルイーズ。
自分は死んでいると思っているグラハム。
他人の感覚とシンクロして痛みを感じる医師のジョエル。

いやあ、人間にとって最大の謎は人間の脳ですね。
週刊読書人に書評を書きましたので、いずれまた紹介しますね。

〈いのち〉とがん: 患者となって考えたこと (岩波新書) 坂井 律子2019年03月19日 23時15分15秒

〈いのち〉とがん: 患者となって考えたこと
出生前診断の取材で有名なNHKディレクター、坂井さんの闘病記です。
病気は膵臓がんの Stage 4 。
ちょっと知識のある人なら、この状態から生還できる患者はほとんどいないと知っているでしょう。
この本は未完です。坂井さんはお亡くなりになりました。

絶筆に終わってから、その後、どういう心の動きがあったかは知りようがありません。この本で語られているのは、生きようとする彼女の気持ちです。
死を受容しようとはしない。
人は、死ぬまで生き続ける。
そうした思いが、迫力を持って迫ってきました。

「死を想え」という言葉がありますが、やはり人は死に瀕しないと死を考えることはできないようです。
坂井さんは一生懸命、死について考えました。
そして生きるということについても考え抜きました。
がん患者はどんなインテリでも最後には「金の藁」を掴もうとすると言います。
「溺れる者は・・・」のことですが、ものすごく高価な民間療法や保険の効かない治療に手を出すということです。
同じ藁でも、値段が金の藁なんですね。

ぼくはそういう闘病記をたくさん読んできましたが、坂井さんはジャーナリストとして、藁を掴もうとはせず、科学的な治療を受けていました。
そしてそれを言葉にする力がありました。これは素晴らしいことだと思います。
人はなぜ、手記を残すのか。なぜ、闘病記を書くのか。
それは言葉が思考を引き出し、思考が人生の意味をクリアにしていくからではないでしょうか?
生きることに執念の炎を燃やした坂井さんの、実に見事な文章でした。
坂井さんのルポルタージュがもう読めないと思うと、本当に残念です。
○「ルポルタージュ出生前診断」
○「いのちを選ぶ社会」
は生命倫理を学ぶ者にとって、必読の傑作だったと思います。
どうぞやすらかにお休みください。

いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち(39)2019年03月21日 09時18分17秒

連載第39回を書きました。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190225-OYTET50000/

世界における「障害胎児」の現況です。
よかったら読んでみてください。

次回(4月4日)で、最終回です。

吃音: 伝えられないもどかしさ(近藤 雄生)2019年03月23日 13時09分49秒

吃音: 伝えられないもどかしさ
これはなかなか出会わない傑作でした。
吃音の苦しみを描いたノンフィクションです。
本書によれば、日本には100万人の吃音者がいるそうです。
この数字にはちょっと驚きますね。
中学時代の同級生に吃音の子がいましたが、ぼくの長い人生で吃音の人に会ったのは、その友人だけです。
100万人と言えば、100人に一人ですから、そんなに多いのかな?という印象です。

吃音の辛さが本書では細かく描かれています。
不登校になった子、就職できなかった人、仕事を失った人、うつ病になった人、自殺してしまった人。
この辛さは本書を読むまでまったく知りませんでした。
そして吃音という「障害」についての科学的な解説もたくさん述べられています。
知らないことが山ほどありました。
非常に勉強になり、また、「障害」のある少数派の苦しみを深く理解することができました。

筆者も吃音を持っていました。ところがある日、それが消えてしまうんですね。この不思議さは何でしょう?
われわれには、分からない脳の謎がまだまだあるということですね。
なお、著者の文章は大変しっかりとしており、読み手を惹き付けます。筆の運びに乱れが無く、几帳面で土台のしっかりした文章です。
相当、実力のある書き手だと感じました。

こういう本はぜひ多くの人に読まれて欲しいです。
一級品のルポルタージュですので、ぜひ、オススメします。

ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実 (講談社現代新書) 望月 優大2019年03月24日 20時59分44秒

ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実
タイトルの意味は、日本には日本人と外国人が住んでいるということです。あるいは、表向きの日本と、真の日本という意味でしょう。
日本は建前上「移民政策」をとっていません。
しかしこれはまさに建前であって、日本人は減り続け、外国人は増え続けています。
永住権を持っている外国人は100万人を超えています。
首相が何と言おうと、日本はすでに「移民国家」なのです。
そしてこれは自然にこうなったとか、やむを得ずこうなった・・・というのではなく、日本がこういう道を選んだということを私たちは知っておくべきです。

現在、引っ越しのシーズンですが、引っ越し難民があふれていることは、みなさん、ご存じでしょう。
また宅配便の「再配達」問題もクローズアップされていますね。
要するに日本は完全に労働力不足なんです。
首相が「一億総活躍」とか言っていますが、これは、老人も働かないと、産業が回っていかないし、高齢者の生活も成り立たない訳です。

深夜のコンビニで働くのも外国人だし、コンビニのためにお握りを工場で作るのも外国人です。
永住外国人がどんどん増えて、この方たちがやがて高齢化した時にどう遇するのか、しっかりと考えておく必要があるでしょう。

政治をやる人は、権力を握ることだけを考えるのではなく、日本の未来図を今から描いておいて頂きたいですね。