アクセスカウンター
アクセスカウンター

いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち(36)2019年02月07日 11時11分55秒

『いのちは輝く』 連載第36回目です。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190110-OYTET50016/

「女性の権利」から見た人工妊娠中絶について書きました。よかったら読んでみてください。

高橋英世先生の思い出2019年02月08日 15時27分44秒

はじめて先生に身近に接したのは、医学部6年生の時のベッドサイドラーニングでした。
小児外科病棟には30人くらいの患者が入院していましたが、1号室の最初のベッドで、われわれ学生は教授から2時間くらいみっちり絞られるのです。
たった1人のベッドに2時間ですから、この先どうなるんだろうと目眩がする思いでした。
先生の質問は大変厳しく、またある意味で答えがなく、延々と学生に考えさせて真理を追求するというスタイルでした。
先生の実習は、その厳しさから、当時スパルタ教育で名を馳せた私塾に模して「高橋ヨットスクール」と学生の間で呼ばれていました。
しかし、単に知識を問うだけではない実習は、ある意味感動的でした。
昼過ぎにベッドサイドラーニングが終わると、小児外科に進むことが決まっていた僕に対して、同じグループの蓑島君が「おめでとう! すばらしい教授のもとで勉強できるね!」と言ってくれたのが印象的でした。

先生は、中山恒明先生の第二外科の伝統を最も正当に受け継いだ教授と言われていました。
最後の大物教授とも、教授の中の教授とも評判をとっていました。

先生の手術の指導は大変厳しく、初オペの鼠径ヘルニアの時は、前立ちを務めながらも一切手伝わず、怒声だけが飛んでくるというスタイルでした。これによって若い外科医は独立心を学びます。
僕の初オペは比較的短時間で終わったのですが、研修医の終わりにやった卒業試験では、鼠径部の解剖が分からなくなってしまい、手術中に立ち往生してしまいました。
手術が終わってどれだけ怒られるだろうかビクビクしていたら、ポケベルが鳴り、教授室に呼び出されました。
同僚の我妻君とおそるおそる教授室へ向かうと、外套を着込んだ教授が部屋の前に立っており、「おう、酒でも飲みにいくか!」と声をかけてくれました。

外科医としては、勘と度胸で手術をする先生でした。そう見えました。
しかしサイエンスに対する深い理解があり、基礎科学をコツコツとみんなで積み上げれば、やがてそれは大きな壁として立ち上がると説いてくれました。
僕に、分子生物学を学ぶ道を開いてくれたのも先生です。このご恩は一生忘れることができません。

さて、高橋先生の現役最後の最終手術はヒルシュスプルング病でした。退官前の最終オペは、普通は簡単なものを選ぶのが常道だと思います。しかし、先生はヒルシュスプルング病でした。
誰が前立ちを務めるのか?
白羽の矢が立ったのは、教室でナンバー4の位置にいた僕でした。こんな光栄なことはありません。
先生と一緒にヒルシュのオペをして、その手際の鮮やかさに仰天しました。ああ、勘と度胸の人ではないのだと思いました。理詰めのオペでした。
手術が終わって最後の糸を僕がハサミで切るとき、僕の手はピタリと止まりました。
「何をやってる!? 早く切れ!」教授がそう言いました。
僕は教授に言い返しました。
「切ると終わっちゃいますよ」
先生はニカッと笑いました。

先生、さようなら。
でもいつか僕もあの世に行きます。その時はまた手術の話をしながら、一杯やりましょう。

わが子が発達障害? 親がぶつかる「最初の壁」2019年02月15日 10時21分23秒

自分の子が発達障害かも?と思った時、誰にどう相談すればいいのでしょうか?
これはあんがい難しいことです。
保護者の方々も知っておいた方が良いことがありますし、医療の側もさらに多くの努力をする必要があります。

読売新聞オンライン「深読みチャンネル」にこの問題について書きました。

https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20190213-OYT8T50016/

時間のある方は、ぜひ、お読みになってください。

その情報はどこから? (ちくまプリマー新書) 猪谷 千香2019年02月16日 21時15分19秒

その情報はどこから? (ちくまプリマー新書) 猪谷 千香
ノンフィクション作家の佐野真一さんにインタビューしたのは、2012年8月でした。
その時は、佐野さんの著作をめぐるやり取りだったのですが、録音が終わって雑談になったとき、佐野さんさはインターネット下の状況について問題提起をしました。
ネットがこれだけ大きく広がり、利用しない人がいない状況にあって、われわれはまだ、人間とネットとの関係を総括していないというのが佐野さんの分析でした。
その当時も、ネット環境を論じた評論はいくつもあったと僕は思いましたが、佐野さんにしてみれば不十分だったのでしょう。

猪谷千香さんの新作は、ネット時代の情報選別力について論じた著作です。
佐野さんが問題提起した頃とは、われわれのネットとのつながりは、さらに深化して、今ではSNSという概念が生まれていることは言うまでもありません。

僕もネットを見ない日はありませんが、実はスマートフォンはほとんど使いません。
理由は簡単です。電車通勤していないからです。
自宅書斎にもクリニックの院長室にも iMac がありますし、自宅居間と診察室には iPad があります。これで常にネットとつながっているわけです。
(診察室の iPad は、紹介先の病院の住所や電話番号を調べる)

SNSはFaceBook をやっていますが、最近FBとどう付き合っていいのかよく分からず、あまり利用していません。
というか、FBは面白いので、こればかりやっていると自分がダメになってしまう気がしています。
ツイッターやライン、インスタグラムは使用していません。

僕でさえこれだけネットに関わっているのだから、多くの人がネット世界に依存していると言ってもいいでしょう。
そういう状況を猪谷さんは、きれいに分析し、何が問題なのか、どう乗り越えていくのかをしっかりと伝えています。
佐野さんが2012年に業界に注文を付けた答えがついに登場したのかもしれません。
僕にとっては知らないことばかりで大変勉強になりました。
今後の著作活動において貴重な参考文献になると思います。

コンパクトに「今」のネット状況がまとめられた1冊です。Yahoo! トピックスの作られ方など、興味深い内容も詰まっています。
オススメの作品です。

いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち(37)2019年02月21日 12時37分39秒

第37回連載記事を書きました。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20190125-OYTET50006/

よかったら読んでみてください。

「小児がん外科医」重版です2019年02月24日 09時02分58秒

小児がん外科医 - 君たちが教えてくれたこと (中公文庫)
5年前に発売された
「小児がん外科医 - 君たちが教えてくれたこと 」(中公文庫)。
細々と売れていたらしく、このたび重版が決まりました。

元々は講談社から出版された「命のカレンダー」という単行本でした。それが中央公論から文庫化される時に、今の名前に変わりました。
単行本で1万部、文庫本で1万部ですから、合計2万部ということになります。

この作品には、ぼくと小児がんの19年にわたる闘いが書かれています。言ってみれば、ぼくの半生記です。
デビュー作であり、ぼくにとってとても大事な作品です。
Amazonで入手可能です。よかったらぜひ手に取ってみてください。

地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団 (森 功)2019年02月25日 21時29分06秒

地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団
新聞報道で何となくは聞いていましたが、具体的にはよく分からない詐欺師集団です。
それが森さんの筆によってクリアに描かれます。
読み応え十分。迫力十分でした。
大宅賞を取った「悪だくみ」よりも面白かったかもしれません。

たばこはNG(毎日新聞)2019年02月25日 22時08分50秒

⼦どもの受動喫煙による被害が注⽬されている。換気扇の下で喫煙していても、同じ部屋にいる⼦どもに悪影響を及ぼすという。⼤⼈の意識を変えるため、⼦どものそばでの喫煙を「虐待」と位置づけるべきだ、という意⾒も出ている。
●換気扇の下もNG
「⼦どもたちのために、たばこをやめた」。約6年前に完全に禁煙した横浜市⾦沢区の⾃営業の男性(49)は、そう話す。⻑⼥(9)が⽣まれてから⼦どもの前で吸うのは控え、喫煙は仕事中に限ってきたが、⾐服はたばこ臭く、残留した成分が⼦どもに悪影響を与える可能性が気になった。徐々に本数を減らし、次⼥(6)が⽣まれるころ完全に禁煙した。妻(36)も「臭いが好きではなかったのでよかった」。
男性の主治医で禁煙を勧めたふじわら⼩児科(同区)の藤原芳⼈院⻑によると、⼦どもの受動喫煙に対する問題意識は徐々に⾼まり、⼦どものために禁煙する⼈も出てきている。だが「禁煙を拒否し、間違った受動喫煙対策を取る⼈がまだ多い。換気扇の下で吸うのも問題がある」と指摘する。
埼⽟県熊⾕市は、市内すべての⼩学4年⽣に尿中のニコチン代謝物質(コチニン)の濃度検査を呼びかけ、約9割が検査を受けている。市医師会がまとめたデータ(2016年度)によると、室内の「台所・換気扇・レンジフード付近」で親が喫煙した場合も、⼦どもの尿の中に残るコチニンの濃度は⾼くなっていた。
両親とも⾮喫煙者の場合は1ミリリットル中1・3ナノグラム以下(1ナノグラムは10億分の1グラム)だが、⽗親が換気扇付近で吸う場合は7・1ナノグラムと5倍以上、⼦どもと接する時間が⻑い⺟親では19・3ナノグラムと約15倍になった。喫煙場所が居間・リビング▽書斎・寝室▽トイレ▽⾃動⾞内の場合はさらに⾼濃度で残留する。また、ベランダや屋外で吸っていても、窓から部屋に流れ込む煙を⼦どもが吸い込んでいるため、尿から残留物質が出ている。
低濃度でも⻑期間ニコチンが体内に⼊れば、⼦どもの健康に悪影響を及ぼす恐れがある。換気扇の下や家の外で吸えばいい、というわけではないのだ。検査をした井埜利博・いのクリニック院⻑は「どこでたばこを吸っても⼦どもの受動喫煙被害は避けられない」と話す。井埜院⻑によると、⼦どもは受動喫煙により気管⽀ぜんそくや気管⽀炎、⾍⻭、中⽿炎のリスクが⾼まり、せきやたんが出やすくなる。また、乳幼児突然死症候群(SIDS)に⾄る可能性もあるという。
●煙は「⼤気汚染」
最近、特に注⽬されているのは、たばこの煙に含まれる微⼩粒⼦状物質「PM2・5」だ。井埜院⻑らが3〜8歳児のいる世帯でPM2・5を測定したところ、両親とも⾮喫煙の場合は値が0に近いのに、親が喫煙者である場合、親が寝ている時間以外はPM2・5が許容量の数倍レベルの⾼濃度で検出されていた。⼦どもの受動喫煙に詳しい別所⽂雄・⽇本医療科学⼤教授(⼩児科学)は「中国でPM2・5による⼤気汚染が問題になっているが、たばこの煙は⼤気汚染のようなもの。呼吸器疾患を引き起こすだけでなく、⼦どもの発達に影響するとの研究もある」と話す。
こうした現状に斎藤麗⼦・⼗⽂字学園⼥⼦⼤教授(⼩児保健)は「家庭や⾃動⾞内での⼦どもの受動喫煙は虐待として法規制すべきだ」と訴える。児童虐待防⽌法では(1)暴⾏など⾝体的虐待(2)わいせつ⾏為(3)減⾷、放置などネグレクト(4)暴⾔など⼼理的虐待−−が虐待と定義されているが、⼦どもの受動喫煙は「第5の虐待になりうる」と警鐘を鳴らす。
●公園に残る灰⽫
だが、⼦どもの受動喫煙に対する⼀般の意識は低い。斎藤教授が11年、全国の政令市、特別区、東京都内市町村の児童公園の喫煙対策を調査したところ、16%が「灰⽫を設置している公園・遊園がある」と回答。うち7割は13年の追跡調査でも、すべての灰⽫は撤去していなかった。
鈴⽊修⼀・国⽴病院機構・下志津病院⼩児科医⻑は、「ぜんそくの⼦どもの前で親が喫煙している例もあるが、医師が厳しい態度で臨むと、親は本当の喫煙状況を話さなくなってしまうことがある」と経験を打ち明ける。「『虐待だ』と頭ごなしに批判するより、親を⽀援する態度を⽰し、まずは室内禁煙を勧めるような形で介⼊したほうがいい」と提案する。【斎藤義彦】
罰則付き条例導⼊を検討
⼦どもの受動喫煙対策に関する法令はあるのか。
東京都は「⼦どもを受動喫煙から守る条例」を昨年4⽉に施⾏。学校や公園、⼩児科などの医療機関だけでなく、家庭内や⼦どもが同乗している⾃動⾞内での⼦どもの受動喫煙を防⽌する努⼒義務を定めた。これに続き、⼤阪府も「⼦どもの受動喫煙防⽌条例」を昨年12⽉、施⾏した。
ただ両条例とも罰則や通報、⾏政機関による指導規定はなく、強制⼒に乏しい。都の条例作りを主導した岡本光樹都議(弁護⼠、都⺠ファーストの会)が17年に発表した条例案には罰則、通報義務、都などによる指導が盛り込まれていたが、削除された。「家庭まで監視するのか、といった抵抗の声があった」と岡本都議は振り返る。岡本都議によると、オーストラリアでは16歳未満や18歳未満(州により異なる)の⼦どもが同乗している⾃動⾞内での喫煙が、罰則付きで禁⽌。フランス、カナダ、英イングランドや⽶カリフォルニアなどの州にも同様の法令があるという。
兵庫県では「受動喫煙の防⽌等に関する条例」の⾒直しにあたり、公共施設やホテル、映画館などの施設管理者が20歳未満の⼈や妊婦を「喫煙区域に⽴ち⼊らせない」と定めた規定に違反する場合のみ罰則を設ける改正⾻⼦案を昨年末、提⽰した。居宅など私的な区域や⾃動⾞内でも20歳未満や妊婦がいれば喫煙を禁じるが、罰則までは踏み込めなかったという。⼀部でも罰則が付けば、⼦どもの受動喫煙を防⽌する法令では初となるため、今後の議論が注⽬される。