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いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち(3)2017年11月02日 12時34分14秒

第3回目を書きました。
この一件は思い出すのも辛いできごとでした。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171012-OYTET50005/

当時ぼくは赤ちゃんを助けられなかったことで、小児外科医として非常に傷つきましたが、今から考えると、家族はもっともっと傷ついていると思います。

だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人(水谷 竹秀)2017年11月05日 16時58分19秒

だから、居場所が欲しかった。 バンコク、コールセンターで働く日本人
タイのバンコクにコールセンターがあります。
これはタイの企業のものではありません。日本企業のコールセンターなんです。注文や問い合わせ、クレームの処理をバンコクでやっているんです。つまり経費節減です。
顧客は日本人ですから、問い合わせも当然日本語。
つまり働いているのは日本人です。
このコールセンターには、若者というにはちょっと年齢が高く、日本のメインストリームからは外れてしまった人たちが働いているのです。

困窮邦人と言うほど金銭的に切羽詰まっている訳ではありません。しかし経済的に裕福でもない。日本は居づらく、自分の居場所を見つけられない。そういう若者から中年がバンコクに渡ってくるのですね。
作品としてはある意味地味でしょう。しかし、地味な本を書くのって相当な筆力が必要なんです。
水谷さんは文章もうまく、取材も大変粘り強い。人間を描くと言うことに精力を注ぎ、それがしっかりとした形になっています。

開高健賞を受賞して、その後も作品を発表し続けています。受賞作を含めてすべての完成度が高いと言えるのではないでしょうか?大変良質なノンフィクションで、こういう本は絶対に売れるべきです。
オススメです。

暮らしのなかのニセ科学 (平凡社新書) 左巻 健男2017年11月07日 22時00分05秒

暮らしのなかのニセ科学
前半の方は、広く浅くという感じで、あまり読み応えがありませんでしたが、後半には僕が知らなかったことがいくつもあり、とても勉強になりました。
インチキ科学はどうも宗教みたいになり、教育に進出する傾向があるようです。
教育を抑えてしまえば、宗教で国を支配できるという考え方でしょうか?
自民党の政治家さんにはいつの時代にもそういう人がいて、本当に不安になります。
ま、ちょっと話が逸れましたが、マイナスイオンが健康にいいかどうか知りたい人はぜひ読んでみてください。
良書です!

「子どもの病気 常識のウソ」 発売です!2017年11月08日 09時03分48秒

「子どもの病気 常識のウソ」
昨年1年にわたってヨミドクターに連載した「松永正訓の小児医療〜常識のウソ」が、中央公論ラクレから書籍化されました。
【子どもの病気 常識のウソ】というタイトルです。
ネットを初めとするあやふやな言説に対して、正しい医療情報をクリアに提示しています。迷信・俗説・ウソに関して、スッパリと切って捨てています。
本日から、Amazonで購入できます。

http://amzn.asia/h2mjhE7

書籍化にあたって加筆・修正・削除・推敲をおこないました。
少しでも、面白く、役に立ち、分かりやすく書いたつもりです。
医療エッセイとしても十分に楽しめると思います。
新書ですから値段も手頃です。ぜひ、ご覧になってください。

プレゼント実施中2017年11月09日 11時34分06秒

ヨミドクターでは「子どもの病気 常識のウソ」のプレゼントを行っているようです。
読売新聞の ID を取得すれば(無料です)、誰でも応募できるようです。
競争倍率はそんなに高くないと思われますので(笑)、ぜひ、応募してみてはいかがでしょうか?

https://yomidr.yomiuri.co.jp/book_present_201711/

↑ からです。

ユニクロ潜入一年(横田 増生)2017年11月12日 15時46分06秒

ユニクロ潜入一年(横田 増生)
潜入ルポというのは、ノンフィクション文学の王道の一つです。
鎌田慧さんの「自動車絶望工場」などは、ノンフィクション史に輝く金字塔ですよね。さて今回の「ユニクロ潜入一年」は、タイトル通り、アルバイトとしてユニクロで働き、その内情を記録した作品です。

巻頭、著者はこの本の執筆の動機を「怒り」だと説明しています。
僕はそれを読んで危ういなと思いました。
ノンフィクションをどう書くかというのは、作家によって考え方に違いがありますが、僕は喜怒哀楽を持ち込んではいけないと考えています。
情緒は捨てる。そして事実だけを提示する。
作家が怒るのではなくて、事実を示すことによって、読者の心の中に怒りの感情を呼び起こす、これがノンフィクションだと僕は考える訳です。
そういう意味で、あまり期待しないで読みました。
ところがその期待はまったく違った方向へ裏切られました。
とても面白いんです。

アルバイト生活を淡々とルポとして描く方法もあったと思うのですが、所々で横田さんの感情や評論が入って来る。その加減が絶妙で、読者を飽きさせないんですね。大変文章がうまく、物語る力が優れていると感じました。

ユニクロを描くことで、この資本主義社会で儲けるという構造を見事に描いたと思います。
柳井社長が社員に向かって、「〜〜して頂きたい」という言い方で、方法を自分で示さず、結果だけを求める威圧的な姿勢は大変興味深く感じました。
大学病院の教授も非常に威圧的に命令を下しますが、さすがにもう少し具体的な命令をしていました。

さて、この本の冒頭に横田さんが解雇される場面が出てきますが、これは最後に持っていくべきだったのではないでしょうか?
映画ではないので、やり過ぎだと思います。
ルポルタージュならそれらしく、時系列は守って欲しかったです。

しかしながら、そうした欠点があったとしても本作は傑作であることに間違いありません。
オススメです。

「旅する蝶」のように: ある原発離散家族の物語(岩真 千)2017年11月14日 20時58分00秒

「旅する蝶」のように: ある原発離散家族の物語(岩真 千)
福島第一原発の事故を受けて、宇都宮から沖縄へ避難する家族の物語です。
宇都宮がどの程度危険だったのか(あるいは今も危険なのか)、僕には専門知識が無いのでよくわかりません。
実際、宇都宮の住人で避難した人はあまり多くないようで、だからこそこの本が成り立っているとも言えます。
そして夫婦の間でも放射線被害の認識に大きな差があり、その葛藤が物語の中心でもあります。

この本はノンフィクションなんでしょうか? それとも私小説?
そこはよく分かりませんでした。
夫婦の諍いをここまで細かく書くというのは、ノンフィクションとしてはやり過ぎに思えるし、私小説であれば納得できる部分があります。
著者にはそこを明記して欲しかったなと思います。

文章には独特な味がありとても心地良い。なぜか、佐伯一麦さんの文章を想起してしまいました。
この本は原発事故問題を描きながら、アメリカ「占領下」の沖縄をしっかりと描いています。部分的には、沖縄を描くことに重点が置かれていたりします。
良い本だなと感じました。

いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち(4)2017年11月16日 19時58分58秒

ヨミドクターに第4回目の原稿が掲載されています。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171025-OYTET50014/

ぜひ、ご覧になってください。

ルポ 思想としての朝鮮籍(中村 一成)2017年11月18日 16時27分04秒

ルポ 思想としての朝鮮籍(中村 一成)
これは重い本でした。
どういうふうに感想を言っていいか、かなり迷う本ですね。
「朝鮮籍」って何だか知っていますか?
これは「北朝鮮」の国籍ではないんです。
太平洋戦争が終わった時、朝鮮半島出身の人たちは、臣民でなくなった。かといって日本国籍ももらえなかった。
朝鮮半島は政治的に混沌としており、まだ国家は存在していなかった。
だから「地域」としての「朝鮮」という戸籍を作った訳です。「朝鮮」とは国家ではなく、地域なんです。

その後、大韓民国が成立して、「韓国籍」を取得した人もいます。
しかし、「朝鮮籍」のままの人もいる。そうした人たちは、言ってみれば祖国が無い訳です。

在日2世は、日本人から差別され、朝鮮語を話せないことから朝鮮人からも差別されるんですね。自分が帰属する祖国がないから自分の根がない。そういう苦しみを私たちはなかなか理解することはできません。
本屋さんに行くと、韓国や中国を嫌った本が山積みになっていますが、日韓・日中の大元に何があったのか、それを学ばなければ私たちは真の意味で東アジアと友好の絆を結ぶことはできないと思います。
相手の国を尊重することこそが、自分の国に誇りを持つただ一つの道だと僕は信じます。

3650 死刑囚小田島鐡男"モンスター"と呼ばれた殺人者との10年間(斎藤 充功)2017年11月19日 12時24分33秒

3650
これは強烈な本でした。
マブチモーター社長宅強盗殺人の犯人の記録です。
同情する訳ではありませんが、この犯人は極貧の中で幼少期を過ごし、親にも捨てられ、犯罪でしか生活ができなかった悲惨な人生を歩んでいます。
成人してからくり返し、逮捕・服役を経て、世間の中にで生きた時間はほんのわずかです。
はっきり言ってこうした人間には、更正への道が事実上無いのではないでしょうか?

で、最後に死刑覚悟で強盗殺人放火を犯す。殺人と放火を行った理由は、証拠を消して自分が捕まらないための手段としてです。
死をもって遺族に償うしかないから、敢えて言葉で謝罪しようともしない。すべてが投げやりなんですね。
自分は生まれて来なかった方がよかったと開き直る。
本当に救いがありません。

作者は10年以上にわたって拘置所で犯人と面会を続け、この本を書きました。
一人の作家が10年の歳月をかけて書き上げる意味を読者は読み取る必要があります。
そういう意味でも壮絶な作品です。