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性的マイノリティーへの差別は根深い2017年10月01日 22時53分30秒

過日、フジテレビの「とんねるずのみなさんのおかげでした」という番組で、「保毛尾田保毛男」というキャラが登場したそうです。
その放送は、ゲイの人を「ホモ」という蔑称で笑い飛ばす内容だったそうです。
翌日、フジテレビの社長が抗議を受けて謝罪したそうですが、それだけで一件落着なんでしょうか?

近年、LGBTへの理解が深まったと言われています。それはその通りでしょう。しかし差別はまだまだ相当根深いと言わざるを得ません。
こうした差別を単なる無知と片付けることはできません。
無知は偏見になり、偏見は人を殺すからです。殺すというのは比喩ではありません。歴史を見れば、差別されてきた少数者が多数派によって実際に殺されてきたことは明らかです。
差別は人を殺すのです。

歴史の進歩とは何かというと、それは不条理な苦痛を超克していく人間の理想主義の姿です。
あらゆる差別は薄皮を一枚ずつ剥がすように、減殺される方向に向かっていきます。

ですが、障害者差別・民族差別・被差別部落への差別・性的少数者への差別はまだまだ残っています。
こうした差別に対して総論で批判してもほとんど意味はありません。
批判は常に具体的で個別的でなければ効果がありません。
要は当事者に骨の髄まで分からせる必要がある。

とんねるずの番組は、企画・撮影・編集・放映までの過程でものすごい数の人たちが関わったはずです。
誰も疑問に思わなかったのでしょうか?
もし、誰かが疑問に思ったのであれば、なぜ、放映を止められなかったのでしょうか?
フジテレビは放映に至る過程をすべてつまびらかにし、関わったすべてのスタッフの責任を問うべきです。
そういう具体的な「行動」こそが、差別を乗り越える道であり、実際の反省の証です。
フジテレビの社長が本当に謝罪したいのであれば、社会に向かって反差別のアクションを身を以て示す必要があります。

小池百合子は悪くない2017年10月03日 14時51分52秒

小池さんはウルトラ右翼の超国家主義・国粋主義者ですから、今の混乱は別に驚くに値しません。昔から何も変わらないということです。
では、小池さんと前原さんの間でどういう話し合いがあったのでしょうか?
これは誰にも分かりません。お互いが相手の言葉を自分の都合良いように解釈していたのかもしれません。
いずれにしても民進党は無血開城した訳ですから、小池さんに踏み絵を踏まされるのは仕方ないとも言えるし、小池さんとしては筋を通したとも言えます。ただ、この際の小池さんの言動は極めてサディスティックでした。

一番の問題は、「安保法制を適切に運用する」という誓約書にサインして希望の党に入党する元民進党議員たちです。
あなたたちは、安保法制は憲法違反と言っていたのではないか?
政治家として最も大事な思想的土台を180°ねじ曲げるのか?
そういうのを変節というのではないか?
人間として恥ずかしくないのか?

こうした人間が100人以上集まった希望の党などに未来はありません。政治的信条を票欲しさで失った心の奴隷の党です。
ぼくは死んでも希望の党には投票しません。
節を曲げる人間というのは、人として最低です。
医学や科学の世界で大きな成果を挙げた人というのは、自分の信じた道なき道を、己の心の声に従って何年も何10年も努力してきた人です。
そうした人が、人々の幸福や福祉に貢献している訳です。

何の志もなくただうまく立ち回っただけで大学の教授になったような人は、本人だけがいい気になっているもののは、周囲からは尊敬されず、自己満足と保身に生きるだけです。
そこで何かの地位を得たとしても、歴史の評価に耐えることは決してありますまい。
それはどの世界でも同じことです。
今回、選挙で風に乗って議員になれたとしても、数年後にはまた変節することになるでしょう。
こういう生き方をぼくは嗤います。

いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち12017年10月05日 09時04分08秒

本日から読売新聞オンライン・ヨミドクターで連載を始めます。
タイトルは「いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち」です。
毎回、写真家名畑文巨さんの写真が付きます。名畑さんは世界中の障害児の写真を撮影していることで高名な方です。

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171005-OYTEW229354/

2週に1回の連載予定です。読者の支持がある限り連載を続けたいと考えています。ぜひ、お読みになってください。

がんになって生きるということ、死ぬということ(常蔭純一)2017年10月06日 22時38分07秒

がんになって生きるということ、死ぬということ
佐野真一さんは、ノンフィクションは名詞(主語)と動詞で書かれるべきで、形容詞は使わない・・・なぜならば形容詞は腐ると言っています。
僕も基本的にその考え方は正しいと考えます。作者は事実を読者に提示することで読者の心の中に形容詞を生み出すべきであり、作者が形容してしまったら読者は引いてしまうのではないでしょうか。
本書はそういう意味で若干形容詞が多かった印象です。
また、描かれる人物の、がんになってからの人生について述べる部分がちょっと物足りなかった。
人間の生死を描くのですから、もう少し筆の力が欲しかったです。

東芝の悲劇(大鹿 靖明)2017年10月08日 17時30分40秒

東芝の悲劇
膨大な取材と圧倒的な筆力で東芝を描く大鹿さんの作品です。
そのクオリティーの高さは僕が説明するまでもありません。
見事というほかありませんし、読み応え十分です。
「悲劇」とありますが、粉飾決算の実態が描かれるのは本のラストの方です。それまでの大部分は、東芝の歴史を綴ったものです。
ですが、歴代の社長に人材を得なかったという点が、悲劇の導火線になっていたということを大鹿さんは言いたかったのでしょう。

企業ドラマとしては申し分のない出来栄えだと感じますが、僕はこうした普通の企業に勤めた経験がありません。会社員勤めをしていたらさらに面白く読めたかもしれませんね。
企業ノンフィクションに興味のある方にはオススメです。

「子どもの病気 常識のウソ」予約開始2017年10月09日 16時09分30秒

1カ月先の発売ですが、「子どもの病気 常識のウソ」(中央公論ラクレ)がAmazonで予約開始になりました。

http://amzn.asia/5NgHxqk

この本は、ヨミドクターに昨年7月から1年間にわたって連載された「松永正訓の小児医療〜常識のウソ」が土台になっています。
連載時、毎回導入部にはさまざまなエピソードを入れ込みました。医療的な話もありましたが、BabyMetal やラグビーの話もありました。
書籍化にあたってそういう部分はすべて書き改め、本題と関係ない話はカットし、逆に医療上の知見は本文中に加筆しています。

ぼくが心がけたのは「面白くて役に立つ」こと。あ、これは講談社のキャッチフレーズでしたね。
でもその通りの役立ち系医療エッセイになっています。
目標は「新書大賞」を取ることです。
というのは冗談ですが、書影ができたらまたご報告しますね。
ぜひ、Amazonの予約ページをチェックしてみてください。

プロレスが死んだ日。 ヒクソン・グレイシーVS髙田延彦 20年目の真実(近藤 隆夫)2017年10月15日 21時07分45秒

プロレスが死んだ日。 ヒクソン・グレイシーVS髙田延彦 20年目の真実
面白くて一気に読みました。
明らかにヒクソン・グレイシーに肩入れして書かれていますが、それは当たり前の話であり、かたやリアルファイターで、かたやフェイクファイターです。
フェイクファイターに肩入れして本を作るなどあり得ないでしょう。
高田はヒクソンと闘った後は、「プロレス」をやめたのだと思い込んでいました。
だからコールマンとの試合が(片)八百長とは大変意外でした。
病膏肓に入ると言いますか、骨の髄までフェイクが染み込んでいたのですね。
それを考えると、高田はどこまで本気でヒクソンと闘ったのかと疑問を感じます。
単に、ヒクソンと闘った男という称号が欲しかったのではないかと思ってしまいます。
本筋とは関係ありませんが、ヒクソンとヒョードルの試合が契約寸前だったとは知りませんでした。
オススメの1冊です。

がんと闘った科学者の記録(戸塚 洋二, 立花 隆)2017年10月17日 19時51分37秒

がんと闘った科学者の記録
死を目の前にした人間が自分の心の内を十分に表現できたかと言えば、それはどうだったのかよくわかりません。
本書は戸塚さんのブログを立花さんが本にまとめたものです。
従って内容はブログの集大成です。
ぼくもブログを書く人間なので分かりますが、ブログと書籍では文章を構想する力がまるで違ってきます。
早い段階でどこかの出版社が戸塚さんに本を書く事を勧めていれば良かったのに本当に悔やまれます。

なお、戸塚さんは自分の再発がん病巣の大きさを測定してグラフ化したり、腫瘍マーカーの値をグラフ化しています。
医学は、数値化して分析する思考法がないと、戸塚さんは失礼な見下し方をしていますが、これは完全な誤解です。
こうしたグラフの作成は医学生でもやります。
読者が誤解しないように念のために書いておきます。

いのちは輝く〜障害・病気と生きる子どもたち(2)2017年10月19日 12時10分51秒

第2回目を書きました。

障害を受け入れることは容易ではありません。ぜひご覧下さい。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171005-OYTET50014/

よろしくお願いします。

Black Box (伊藤 詩織)2017年10月19日 23時14分46秒

Black Box (伊藤 詩織)
詩織さんの告発の書です。
僕にも娘がいますから、読んでいて大変辛かったです。
性犯罪だけでも許せないのに、それが警察や司法の場できちんと捜査・解明されないのは、さらに許せない思いです。
どうすれば彼女は救われるのでしょうか? いかなる方法も無力なように感じられます。
性犯罪はあってはならない。魂が殺されて回復することがほとんど不可能だからです。

この本に注文を付けると、物語る力とか、構成を作り上げる力がちょっと弱かったような印象を受けます。
ノンフィクションは事実をひたすら積み上げて読者を納得させる文学ですから、その点は不十分だったかもしれません。

さらに蛇足を加えると、カバーの写真はちょっと怖い。おそらく彼女の意志でこういうデザインになったと思うのですが、読者を睨むような顔写真は少し強烈すぎます。