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障害と文学―「しののめ」から「青い芝の会」へ 荒井 裕樹2014年08月02日 23時16分35秒

障害と文学―「しののめ」から「青い芝の会」へ
圧倒される思いで一気に読みました。

内容はタイトル通り、障害と文学。
日本の障害者運動は、「綴る」ことから発展していったのです。

青い芝の会のオピニオン・リーダーであった横田さんは詩人でもありました。
横田さんがマハラバ村に参加する前に詩作に励んでいたその舞台が「しののめ」でした。

詩を書くことで横田さんは自分の思想を育み、そして大仏和尚と出会うことで一気に突き抜けたのでしょう。

本書ではマハラバ村に参加する前の横田さんの詩について精密に批評しています。なるほど、こう読むのか。

マハラバから下山した後、横田さんは「障害児殺し」に強く拘って鋭い批判の矢を放ちました。
その理由は、実際に自分が殺される可能性があったからでしょう。
横田さんの父親が事故で首の骨を折り、働けなくなってから、父子は同室で息の詰まるような毎日を過ごしました。
歩くことすらできない横田さんは、他人に簡単に殺されてしまう存在です。
父親との緊張に満ちた時間が横田さんの思想の基盤になっているのでしょう。
横田さんはこの緊張から逃れるためにコロニーに参加した訳です。

横田さんや横塚さんらの自立障害者たちの闘いとは、「大型収容施設からの脱却」と「家族からの脱却」を意味するのですね。
そして自立とは秘密やプライバシーを持つことであり、もっと直截に言えば「性」のタブーを破ることです。

「こんな夜更けにバナナかよ」を読んだ時、シカノさんにプライバシーが無いことに驚き感嘆しましたが、こうして横田さんの生き方を見直すと、CP者と筋ジスとでは、まったく異なる自立の在り方が浮かび上がってきます。

しかし、筆者の荒井裕樹さん。
ぼくよりも20歳くらい若いではないですか。
嫉妬や羨望を通り越して、尊敬してしまいます。
大変な良書です。