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神経芽腫の染色体に関する「松永仮説」2014年05月09日 23時46分34秒

神経芽腫の3N腫瘍の染色体分析
神経芽腫は大雑把に2種類の性質に別れます。
最初のグループは、「1歳未満」「転移なし」「分化または退縮する」「N-mycはまず増幅しない」「予後良好」です。染色体分析をすると、染色体が3倍体に増えています。これを3N腫瘍と呼びましょう。
次のグループは、「1歳以上」「転移あり」「分化も退縮もしない」「N-mycが増幅することがある」「予後不良」です。染色体分析をすると、染色体が2倍体のままです。これを2N腫瘍と呼びましょう。

普通に考えれば、「良質」の腫瘍が、より「悪性」の腫瘍に時間の経過と共に変化していく訳ですから、3Nから2Nへ変換するのはまったく不思議です。
従来の解釈では、神経芽腫とはそもそもオリジンが異なる二つの腫瘍、すなわち、3N腫瘍と2N腫瘍から成ると理解されてきた訳です。
しかしなぜ、腫瘍の染色体が3Nに変化してしまうのか? そしてなぜ、3Nの方がはるかに予後が良いのか、それはずっと謎であります。

ぼくは今日、ふと考えました。

「がん抑制遺伝子」を同定しようと考えた科学者たちの大本になった実験は、「細胞融合法」にあります。
がん細胞と正常細胞を融合させると、がんの性質が失われてしまう。だから、正常細胞の中には「がん抑制遺伝子」が存在すると彼らは睨んだ訳です。
その仮説が正しいことは、後に証明されたので周知のことですが、ぼくは「細胞融合」に注目してみました。

この実験は、ポリエチレングリコールやセンダイウイルスを利用して細胞を融合させることができる。
融合した直後には、細胞の中に核が二つある。
異核共存体(ヘテロカリオン)という状態です。
ここから細胞の分裂が始まると、細胞はまず4Nになります。
やがて染色体が脱落して3N前後になります。

神経芽腫でもそういうことが起きているのかもしれない。
細胞が融合して4Nになった瞬間が、神経芽腫の誕生と仮定してみましょう。

そして、染色体が脱落して3Nになった状態が神経芽腫の3N腫瘍なのではないでしょうか?
二つの細胞とは、「神経芽細胞と神経芽細胞」なのか、それとも「神経芽細胞と間質細胞」なのか、それはわかりません。
ですが、この3N腫瘍にはNGFシグナルを受け取る遺伝情報が残っていると考える訳です。

そしてさらに時間が経過すると、染色体の脱落が続く。いやもしかしたら、細胞がサバイブするために、分化能を有するアレルを捨てて、2Nになる。
これがまさに2N腫瘍なのではないでしょうか?
2N腫瘍は分化しませんから、自己の生存に有利なようにさらにN-myc遺伝子を増幅させます(N-mycが予後因子としての価値を今日失っていても、神経芽腫のバイオロジーを考える上で避けて通れない)。
ALKも重要な役割を果たしているかもしれません。

つまりぼくの仮説は、4N→3N→2Nという流れです。
いかがでしょうか?
現役の研究者のみなさん、この仮説を検討してみてください。

(なお、染色体分析の写真は、埼玉県立がんセンターの金子安比古先生に頂いたものです。転載を厳禁します)

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