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二重らせん (講談社文庫)2013年06月19日 21時03分21秒

二重らせん (講談社文庫)
休診日の今日は、一日、書斎のソファーに寝っ転がって読書をしていました。
水曜日に休めるというのは実に気持ちがいいもので、ちょっとした罪悪感みたいなものが無い訳ではありませんが、ま、ぼくも長く生きてきたのだから、こういうご褒美もあっていいのかなと思います。

で、2冊本を読んだのですが、そのうちの1冊の話を書きましょう。

「二重らせん」と言えば、もちろんこれはワトソンの自伝です。
20数年ぶりに再読しました(買い直した)。

DNAの構造を解き明かしたことは、20世紀のライフサイエンスにおいて、最大の発見であったことは誰にも異存はないでしょう。
なぜかと言えば、あとから続いてきた科学者たちは、全員が二重らせんという扉をくぐっているからです。

ワトソンが偉大だったところは、DNAこそが生命の本質=遺伝子と考えて、その構造を明らかにすることに執念を燃やした点です。
ある意味、DNAという分子の重要性に気付いていた人が、その時代にはあまりいなかった。

そしてDNAの形を決めてみると、同時に自己複製の形式までわかってしまったんですね。
自己複製できるということは遺伝子の要件ですから、結果、予期せずにさらなる大発見を含んでいたのです。

で、面白いのは、ワトソン自身は何の実験もやっていないこと。
ウイルキンスらがひたすらX線解析をしていて、ワトソンはデータだけをもらって、ただただ考える訳です。
考えて考え抜いて、二重らせんのモデルに到達するんですね。
だから言ってみれば、暗号を解読したようなものです。

ワトソンが思考を積み重ねる中で、ハーシー&チェイスの実験が出てきます。シャルガフの法則も見付かります。
こういうことの方が、実は重要なんですね。
実験に基づくデータですから。
ワトソンはそういうものを、特にシャルガフの法則に助けられて二重らせんのモデルに到達します。

利根川先生は、自分の全生活をすべてサイエンスの実験に注ぎ込んで免疫の多様性に答えを出しました。
眠る時間と食う時間以外は、ひたすら実験をやっていた。
それと比べて、なんとまあ、ワトソンの発見は質が違うのでしょうか?
ワトソンは結局、サイエンスの世界で教育者となり政治家となりました。
利根川先生のような真のサイエンティストではなかったのだと思います。悪い意味じゃありませんよ。

ぼくの持っている本書は25刷ですが、169ページに誤植がありました。
「私はコーヒーかすんだら」は、「私はコーヒーがすんだら」の間違いでしょう。