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三浦しをん『風が強く吹いている』2009年03月01日 18時48分25秒

昨晩、三浦しをんさんの『風が強く吹いている』を読みました。

同じぼろアパートに住む大学生10人が箱根駅伝に挑むというスポーツ青春小説です。

まず総論としての感想を言うと、「うまい!」
やはりプロの物書きというのは本当にすごい。
女流作家が恋愛小説を書くのなら分かりますが、これは長距離走というスポーツを見事に専門レベルで描き切っています。
おそらく膨大な取材を重ねたのでしょうね。

駅伝は10人で行なわれますから、登場人物は最低でも10人必要になります。
普通、小説で登場人物が10人出てきたら、読んでいる方はたまりませんよね。
ところが一人一人のキャラがちゃんと書けているんですね。

王子・ムサ・ジョータ・ジョージ・神童・ユキ・キング・ニコチャン・走(かける)・ハイジ。
ほら、ちゃんと暗記しているでしょ?

陸上部にも所属していないアパートの住人たちは、このうち7人が陸上競技とは無縁です。
ですから、話の始まりとしてはちょっと現実離れしていますが、彼らが実力をつけていく過程をリアル感をもって丹念に描いています。

そしてこのストーリーのテーマは、「長距離走とは速いことではなく強いことが大事」というハイジの言葉を走(かける)が理解していく成長の物語になっています。
感動的な場面もいくつかあり、読んでいて涙腺が緩む時もありました。

とにかく三浦さんの豊穰な言葉には圧倒されます。
同時に、ここまで言葉は要らないかな? と思う場面もありました。
語らないことによって伝わる事ってありますからね。

こういう本を読むと、「ああ、読書したんだな」って心の底から思えます。
おすすめの大傑作です。

インフルエンザ第三波2009年03月02日 19時31分28秒

今日のクリニックは受付け開始とともに、たちまち20人以上の方が並ぶことになりました。
さて、風邪でしょうか?
胃腸炎でしょうか?

最初の方、どうぞ!

あれ発熱ですか?
インフルエンザの流行は終わりましたけど、けっこう元気が無いので、念のためにインフルエンザの検査をしましょう。
あれ? 陽性ですね。
では、リレンザの使い方を説明しましょう。

次のかたどうぞ!

あれ、また発熱ですね?
インフルエンザの流行は終わりましたけど、けっこう元気が無いので、念のためにインフルエンザの検査をしましょう。
あれ? 陽性ですね。
では、リレンザの使い方を説明しましょう。

そして延々とこの繰り返し。
先週までは1日に1人くらいまで減少したインフルエンザが今日は少なく見ても20人以上は来院しました。
な、なんなんでしょうか、一体。
インフルエンザの第三波です。

しかし今日からもう3月。
いくら何でもこの第三波は長くは続かないでしょう。

僕はてっきりクリニックは暇だと思って出勤しましたので、不意を食らって正直疲れました。
お昼休みは20分くらいでした。
帰宅して、服は即、洗濯機です。

さて、明日はどうでしょう。
今日ほどではないはずです。

秘書逮捕!2009年03月03日 22時19分41秒

クリニックが終わって帰宅したら、びっくり仰天のニュースが飛び込んできました。
民主党の小沢代表の公設第一秘書が、政治資金規正法違反で逮捕されたのです。

この衝撃は民主党を激しく揺さぶるでしょう。
自民党の人たちは欣喜雀躍といったところでしょう。

では、今後政局がどう展開するか、僕の予測を書いてみましょう。
当たるか外れるか、ま、駄文と思って読んで下さい。

小沢さんは代表を辞任すべきという意見が民主党の中にもありますが、彼は辞任しないと思います。
それはなぜか?
福田内閣との大連立が壊れた時に、小沢さんは辞めると啖呵を切っていますが、あれは自分の意思が通らなかったために、ま、キレた訳です。
この人は自分のわがままが通らないと、すべてを放り出すようなところがあります。
でも、犯罪絡みの汚名を着て、代表の座を辞めるような美学は持っていません。

ロッキード事件の田中元総理なんか、秘書ではなく本人が逮捕されたのに、死ぬまで権力を振るい続けました。
小沢さんは間近にそれを見ています。
その一方で、金丸さんは脱税で政治生命を絶たれました。
その哀れな末路を小沢さんは見ています。

つまり、政治資金規正法違反にからんで小沢さんが辞めるなんてあり得ないと思います。

一方の自民党。
自民党の追求もなあなあで終わるでしょう。
自民党議員にも献金を受け取っている人間がいるからです。

民主党の追い風は止み、民主党の支持率は落ちるでしょうが、かと言って麻生さんの内閣支持率はたいして上がらないと思います。
ただ、自民党の人たちは、民主党の敵失に期待して、麻生降ろしの風は弱くなるでしょう。
麻生さんは予算案が通ったら、チャンスと見て総選挙に打って出ると思います。
しかし、やはり民主党が大勝するでしょう。
小選挙区制ですからね。
小選挙区制では正確な民意は反映されず、どちらか一方に大きく針が揺れます。

と、読みますが、いかがでしょう。
僕なんかは、小沢さんはすっぱり引退しちゃった方がかっこいいと思いますが、ま、そうならないでしょう。

シャフリング・ベビー2009年03月04日 20時22分01秒

クリニックで健診を行なっている時に、シャフリング・ベビーのお子さんをたまに見ます。
1歳近くなってもハイハイせずに、座ったまま移動するお子さんですね。
これを読んでいるママたちも、このシャフリング・ベビーという言葉は時々聞いたことがあるかもしれません。
え? 無い?
では、シャフリング・ベビーの日本語訳は?

実は昨日、出版社の方と話をしていたら、この日本語訳が出版業界では差別用語としてNGの扱いであることを聞いてびっくりしました。
そ、そうすると、小児科医は毎日のように差別用語を使っていたのか。
いや、それとも知らないのは僕だけで、みなさん、「シャフリング・ベビー」の方を使っているのかな。
今度、大学に行ったら小児科の先生たちに聞いてみましょう。

僕が大学を辞める直前に、うちの教授が論文に「不公正」という意味で、「片手○」という言葉を使っていました。
その論文は千葉医学会誌という千葉大医学部の雑誌に掲載予定でした。
ゲラをチェックしていたのは、雑誌編集長のS教授。
僕の恩師です。
S教授は、内容に関して確認したいことがあって、それを僕に見せたのです。
僕は、内容とは関係ないことではありましたが、「片手○」という表記はいわゆる差別用語じゃないですか? と言いましたが、結局その表現はそのまま雑誌に載ることになりました。

もちろん、こういった言葉は本来の意味で「差別」ではありません。
出版業界内での決まりごとであって、「差別」とはこういうものではありません。
差別の本質とは何か、みなさんご存知でしょうか?
日本には半数の男性がいて半数の女性がいます。
男女差別は厳然と存在するので、日本人の二人に一人が差別されているという論法も成り立つでしょう。
また、それを否定すると、「差別を認めないのは男女差別だ!」と糾弾されかねません。

そういうことを踏まえた上で、敢えて言わせてもらえれば、差別というものはそんな生易しいものではありません。
日本人の大多数の人には理解できませんが、この世の中には不条理の苦痛に終生悩まされている人たちがいます。
そういう人たちの苦痛の本質は、「差別する言葉」にあるのではありません。
苦痛の根源は広い意味での「経済」にあります。

医学部の教育なんかも、障害者のバリアフリーを教える時間があったら、それに加えて「経済」とは何かを教えればいいですがね。
無理か。

車椅子でバリアフリー2009年03月05日 20時08分14秒

昨日の話の続きではないけど、車椅子の患者さんにとってバリアフリーであることは、当然の要求であると思います。

実は、僕は自分のクリニックを作った時に、このことをまったく考えていなかったことを正直に告白しましょう。
CP(脳性まひ)の患者さんがうちのクリニックに来るなんて、考える余裕が無かったからです。
車椅子のこととは全然別に、まず、うちのクリニックではスリッパをやめました。
土足ですね。
スリッパというのは、僕はちょっと神経質かもしれませんが、どうも不潔というか、非衛生的なイメージがあるのです。

そして、廊下の幅。
これは設計の段階でかなりこだわりました。
廊下なんて狭くても広くても同じと思うかもしれませんが、立派な家というのは、玄関ホールや廊下が広いものなのです。
そこで、大学病院の小児外科の廊下の幅を測り、これと同じ広さにしました。
ですからうちはけっこう、広いですよ。

その結果、どうなったか?
車椅子がバリアフリーで診察室まで入って来れるんです。
今となっては本当に良かったと思います。
結果オーライなので、ちょっと恥ずかしいのですが。

僕は小児外科医として20年働いてきましたが、その中にはCPのお子さんに手術をしたことも何度もあります。
でも、CPのお子さんの病態や管理に詳しい訳ではまったくありません。
そんな僕のクリニックにも、車椅子に乗ってCPのお子さんが来てくれたりします。
有り難いじゃないですか?

こんな僕で良ければ、一生懸命、診ますよ。
CPのママたちのご苦労なんか、僕には100分の1も理解出来ないかもしれませんが、分かろうとはしたいですね。
幸い、うちのスタッフは受付けも看護師も、こういったお子さんを苦手にしている人は誰もいません。

いつでもどうぞ。
うちは車椅子でバリアフリーです。

お前はタリバンか!2009年03月06日 22時25分33秒

日光を浴びてはいけない「ポルフィリン症」のために、黒い頭巾を着用して外出していた18歳男性に、鳥取県の警察官が「お前はタリバンか!」と職務質問をしたそうです。

この患者さんはどんなに悔しかったでしょう。
その悔しさを思うと、何とも切なく思います。

しかし、敢えて皮肉な物の見方をすると、「警察官の常識」ってそういうものです。
彼らは国家の治安を守ることが究極の目的で、その手段は人を疑うことです。
もちろん、個人個人には豊かな人間性がありますが、それは職務とは関係ありません。

そして、ポルフィリン症の患者さんが黒い頭巾をかぶって外出することに無知なその警官。
でも、それもある意味、それは「その警察官の常識」でしょう。

残念ながら一般の人たちは、ポルフィリン症という病気を知りません。
ですから、当然、患者さんが黒い頭巾で外出していることも知りません。
そういった世間の無知、それは小児がんの世界にも当てはまります。
今回の事件に関して専門家が「憤りを感じる」とコメントしていますが、もっともっと専門家が世間を啓蒙してください。

学者は象牙の塔のこもっていても、何も世界を変えることはできません。
「たった一人の努力が世界を変える」
これは僕の恩師の言葉です。
僕は、蟷螂の斧と笑われても、書き続け、本を作り、小児がんのことを世界中に発信したいと思っています。

明晴学園2009年03月07日 22時33分13秒

ろう学校というのは手話で授業をしていると思っている人が多いかと思いますが、実はそうではありません。

日本のろう学校は日本語の口話法で授業が行なわれています。
これは、ろうの人にとっては困難この上もないことです。

たとえば、あなたが英会話学校に行くとする。
すると、英語教師がガラスの向こう側にいて、英語を口パクしているとしましょう。
あまたはそれを見て、英語が喋れるようになるでしょうか?

手話にも誤解があります。
手話を「日本語をゼスチャーで表現したもの」と理解している人が多いのですが、それは間違いです。
それは「日本語対応手話」といい、その文法はあくまでも「日本語」です。
本当の手話は「日本手話」といいい、独自の文法と文化を持ちます。

なぜ日本のろう学校では「日本手話」が使われないのでしょうか?
僕は詳しい理由は知りませんが、一つの理由として「日本手話」ができる教師がほとんどいないことが上げられています。

そんな状況にあって、我が国には一つだけ「日本手話」で授業を行なっている学校があります。
明晴学園です。

ところが明晴学園は小学部までしかなく、中学部の建設が懸案になっています。
http://www.meiseigakuen.ed.jp/

中学部建設のために、僕は先日、寄付を行ないました。
こういったことは公開する話ではないのかもしれませんが、寄付というのは一人の力では何も実を結びません。
多くの人に明晴学園のことを知ってもらって、もし、この中学部の建設に賛同してくれるなら、多いに応援して欲しいのです。

ぜひ、ホームページをご覧になってください。

出そろいました、世論調査2009年03月08日 22時51分08秒

三大新聞の世論調査が出そろいました。
どの新聞を見ても、結論は共通しています。

まず、小沢さんの説明に納得している国民はほとんどいなくて、50%を越える人が、代表を辞任すべきと思っていることです。
そして、麻生さんや自民党の支持率は決して上がっていないこと、民主党の支持は減っていても依然として自民党より優位にあることです。

それにしても、その小沢さんよりも総理にふさわしくないと思われている麻生さん。
なんという評価の低さでしょうか。

民主党は本当に難しいところに立たされましたね。
このまま小沢さんで行くのか、それとも代表を交代させるのか。
マスコミには、小沢さん側が法を犯したような報道が次から次へと流されていますが、これはおそらく検察のリークでしょう。
検察も必死ですよね。

3月24日が逮捕された秘書の起訴期限ですから、ここが勝負ですね。
もし不起訴になれば、小沢さんはこのまま走るだろうし、漆間さんが捜査の見通しを語ったという事実が重くなって、「国策捜査」という言い方が再燃するでしょう。
逆に、起訴されるようならば、小沢さんはさっさと辞めてしまったほうが、民主党は政権を取れる確率がむしろ高まるでしょうね。

「格闘する者に○」三浦しをん2009年03月09日 20時12分30秒

三浦さんの本が面白いので、昨日の夜は「格闘する者に○」を読みました。
三浦さんのデビュー作です。
作家はデビュー作にそのすべてが込められていると言いますが、これはその後の作品とあまりにも作風が違うので、正直かなり驚きました。
つまり、三浦さんは作家としてデビュー作後、進化したということでしょう。

しかし、この本・・・。
K談社の人が読んだら、めっちゃ気を悪くするでしょうね。

K談社の入社試験の様子が書かれていますが、面接官の悪口がおもしろおかしく・・・。
K談社って、誰が読んだって講談社ですよね?

三浦さんって、もしかして講談社から1冊も本を出していないのでは。
デビュー作で、日本一の出版社を揶揄するって、よっぽど自分の力量の自信があったのでしょうか?

ところで肝心の本の中味ですが、デビュー作としては本当に文章が巧みだと思います。
しかし、話としてはどうでしょう? あまり面白いとは感じられませんでした。
自分の親が政治家という設定や、付き合っている男性が70代の老人という設定は、何を意図したかよく分かりませんでした。
皆さんの意見はどうでしょうか?

インバギ2009年03月10日 23時52分14秒

今日のクリニックは午前中にわずかに26人しか患者さんがお見えになりませんでした。
しかし、なんとそのうちの10人くらいがインフルエンザ。
この流行は、春休みにならないと終息しないのかもしれませんね。
しかし全般としてクリニックは大変に暇。
閑散としていて、待ち時間はほんの少しです。
終わってみれば、70人近くの来院でした。

さて、今日の最後にお見えになった患者さんは、腹痛と嘔吐でした。
昨日から腹痛で、昨日は2回、小児科医の診察を受けています。
今日はそれに嘔吐が加わり、僕のクリニックを受診した訳です。
カルテを見ると、かなり遠方から僕のクリニックに来ています。
わざわざ、僕のクリニックを選んで遠くから来たのでしょうか?

診察してみると、単なる胃腸炎にみえます。
こういったお子さんは毎日、数十人、来院します。
お腹もそんなに所見はないし・・・あれ?

この痛がり方。
ちょっと特殊な、「あの痛がり方」に似ています。
昨日は2回、浣腸を受けて血便は無し、とのことですが・・・。
超音波をスイッチオン。
2秒で診断がつきました。

腸重積です。
業界用語で言うインバギです。
お母さんに説明すると、昨日からお母さんはインバギを疑っていたそうです。
なるほど、多分それで小児外科医である僕のところへ来たのですね。
なんとクレバーなお母さんでしょう。

しかし、この子は年齢が高く、普通はインバギを起こさない年齢。
僕は腹部所見に騙されて、あやうく見逃すところでした。
きちんと診断ができて本当に良かった。
あと1日様子を見ていたら、腸が腐っていたかもしれません。

しかし、毎日、嘔吐や腹痛のお子さんが何十人も来る中で、非典型的なインバギを診断するのは至難の業です。
今日、僕が診断できたのは、「理屈で考えた」というよりも、「これまでの経験が僕に超音波をやれと命じた」という感じです。

患者さんを大学病院に送って、帰宅して、夜の11時に大学に電話してみたら、患者さんはうまく治ってすやすやと寝ていると。
良かった。
本当に良かったです。