著者は、医療ライターの岩永直子さん。
業界では有名な人で、X(旧ツイッター)のフォロワーが4万人というから、すごい(ぼくの100倍・笑)。
その彼女が、ひょんなことからイタリア料理店で週末にバイトを始めたといいます。
え、何で?
本のタイトルは、『今日もレストランの灯りに』。
灯りに・・・どうしたの? という感じです。
これは読まない手はない!
まず当たり前のことだけど、岩永さんは元読売新聞社の記者なので、文章がいい。
なめらかに転がっていくような筆さばきが、読む者にとって大変心地いい。
細かいことになりますが、体言止めの表現がうまく、文章にリズムがあります。
プロの文章ってこういうものなんでしょう。
この本には次々に魅力的な人物が現れます。
筆頭はもちろんシェフ。料理に対するこだわりが強くて、人間が好きで、そしてお酒が大好きで。
バイトのコイズミ君もいい味を出しているし、お店にやってくる常連さんたちの個性もそれぞれが深い。
常連客の林さんの奥さんは難病の ALS 。ここの話は、ある意味、全体の中でちょっと趣が異なり、医療記者・岩永さんが本職の力を発揮して、林さん夫婦の人生を描いています。
重い話なんですけど、暗くはない。そして意味なく明るくもない。
そういうふうに書いています。
いや、やっぱり岩永さんは「人間」を描かせたら天下一品です。
出会いがあり、喜びがあり、癒しがあり、お客さんの誰もが「ここは自分の居場所だ」と思える場所。そして、別れもあり。
このイタリア料理屋は、ただ料理を出すお店ではなく、人と人とが出会える場所なんですね。
それって、料理の向こう側にある世界なのかもしれません。
ちょっと疲れている人、ちょっと心が暗い人。ぜひ、読んでみてください。
暗闇にマッチを擦るように、ボッと明るい光が心の中に灯ります。
いい時間をいただきました。一気読みでした。
なお、この本はパッケージングが大変良く、カバーデザイン・帯・写真・ブックデザイン、どれもが秀逸でした。
チャプターの間に挿入されたシェフのレシピも、この本にいい味を加えていました。
今日もレストランの灯りに・・・・何でしょう。
灯りに・・・みんな吸い寄せられていくのでしょう。自分の居場所に帰って行くのでしょう。
とても味わい深い1冊です。
みなさんにおススメします。ぜひ、どうぞ。
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