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酔いどれクライマー 永田東一郎物語 80年代ある東大生の輝き(藤原 章生)2023年03月26日 23時15分39秒

酔いどれクライマー 永田東一郎物語 80年代ある東大生の輝き
沢木耕太郎の『無名』を読んだ時に、市井に生きる平凡な人を描いても十分にノンフィクション文学になるんだなと驚きました。
これはそういう本です。
永田東一郎さんは東大生のクライマー。難峰とされるカラコルムK7の登頂に成功しますが、世間的には有名人というわけではありません。
しかし筆者にとっては、人生の中でもっとも興味を抱く人であったらしく、この「無名」なクライマーを本書で描きます。

たしかに永田さんは破格な人だったようです。自由な人だったようでもあります。臆病でもあり、チャーミングで、他人の心を読まない性格もあるようです。
少しアスペルガーなのかとも思いましたが、そういう決めつけで語れる人ではないでしょう。

ぼくにとってこの本が面白くなるのは、K7に登った後です。彼は登山をやめてしまうのですね。
その理由に関しては、筆者が4つの仮説を示しています。この分析もおもしろかった。
そして永田さんは建築士と働き始めるのですが、そこからはある意味で滑落の人生だったようにも見えます。

酒に溺れ、体を壊し、46歳の若さで亡くなります。
単にアルコール依存と言うのはちょっと違うと思います。自分でどういう人生のプランを描くか、それがうまく設計できなかったのではないでしょうか。
これは違う、
こんなはずじゃない、
本当の自分って何だ、、、
そんなことを考えていたようにぼくには感じられました。

分厚い取材と深い資料の読み込みで、一人の人間に生きた証がクリアな輪郭になりました。
その輪郭の中身には、よく見えない暗闇のようなものもありますが、評伝として一級品に仕上がったと思います。
登山に興味のない人も読んでみてください。おススメです。

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