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さようなら、清水文七先生2023年01月04日 19時43分51秒

分子ウイルス学教室の元教授、清水文七教授がお亡くなりになったことを知りました。90歳でした。

ぼくの人生で最大の恩人を一人あげるとすれば、それは清水先生です。先生に対するご恩の気持ちは歳を追うごとに高まっていきます。

ぼくは小児外科医になって3年目に大学院に進学しました。分子ウイルス学教室で神経芽腫のがん遺伝子の研究をしたのです。
先生の教室のメインテーマは、ヒトパピローマウイルスでした。
ぼくだけが異なったテーマで研究させていただいたのです。

清水先生と、指導教官だった白澤先生とぼくの三人で、毎週読書会をしました。がん遺伝子 N-myc に関する世界中の英語論文をぼくが読んで、二人の先生から質問を受けるというスタイルでした。
清水先生は、ぼくを鍛えると同時、ご自身も神経芽腫のがん遺伝子について勉強されたのです。

二人の先生のご指導のおかげでぼくは4年間に4本の英語論文を書くことができました。
いや、それ以上に科学的な考え方を鍛えていただきました。
このことは、ぼくがこれまで35年間医者をやっている中で、臨床医としての基盤になっています。

先生の最大の業績は、Vero 細胞を世界中に広めたことです。
同僚の安村美博先生が樹立した不死化したアフリカミドリザルの腎臓細胞には、多くのウイルスが感染することができます。
つまり未知のウイルスが発生したときに、Vero 細胞を使えば、そのウイルスを感染・増殖させ、分離して同定することを可能にするのです。

2019年12月に武漢で発生した肺炎。研究者たちは、Vero を使いウイルスを捕らえました。これが新型コロナウイルスです。

HeLa 細胞と並び、世界で最も有名な細胞株が、Vero 細胞です。
千葉大医学部が世界に誇ることのできる最大の業績でしょう。

虎は死して皮を残すと言いますが、Vero 細胞は文字通り永遠に生き続けます。
ぼくも一生涯先生の優しさと科学に対する真摯さを忘れないと思います。
どうぞ安らかにお眠りください。

夜の研究室での先生の言葉が今でも耳に残っています。
「どうですか、松永君? 何か新しいことは?」
「ちょっとどうかね、少しビールでも飲みますか?」
いずれぼくも追いかけます。また、ビールを飲みましょう。

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