ギャラリーストーカー-美術業界を蝕む女性差別と性被害(猪谷 千香) ― 2023年01月01日 16時53分35秒
ギャラリーストーカーとはちょっと聞きなれない言葉ですよね。
これは、若い女性作家が画廊に作品を展示すると、中年のオジサンがしつこくつきまとってくることだそうです。
画家というのは、「売れる」のは簡単じゃありませんから、絵を買ってくれる客に対して非常に立場が弱くなります。
だから、こうしたストーカーが横行しているそうです。
これはギャラリーに限った話ではなく、美術の世界は上下関係が厳しく、業界の大物に対して若い女性は言いなりにならなければいけない素地があるようです。
元々美大にそういう風潮があり、それが延々と時を経ても続いているわけです。
要するに美術の世界は男性優位の超マッチョな業界で、女性の人権を無視したハラスメントが横行しているのです。
筆者は分厚い取材で、そういった理不尽の数々をレポートしています。
しかしそれにしても・・・男って本当にアホです。
ですが、こういう間違ったモラルは必ず時代の流れと共に、正されていきます。
アホはいつまでものさばることはできません。
この本は、きっとその一助になるでしょう。
ぼくの娘も美術の世界で生きていこうと思っています。こうした被害に遭わないように、娘にもよく話を伝えておこうかな。
大事なことがたくさん書かれた本です。
みなさんにおススメします。
発売は1月10日。もうちょっとお待ちくださいね。
これは、若い女性作家が画廊に作品を展示すると、中年のオジサンがしつこくつきまとってくることだそうです。
画家というのは、「売れる」のは簡単じゃありませんから、絵を買ってくれる客に対して非常に立場が弱くなります。
だから、こうしたストーカーが横行しているそうです。
これはギャラリーに限った話ではなく、美術の世界は上下関係が厳しく、業界の大物に対して若い女性は言いなりにならなければいけない素地があるようです。
元々美大にそういう風潮があり、それが延々と時を経ても続いているわけです。
要するに美術の世界は男性優位の超マッチョな業界で、女性の人権を無視したハラスメントが横行しているのです。
筆者は分厚い取材で、そういった理不尽の数々をレポートしています。
しかしそれにしても・・・男って本当にアホです。
ですが、こういう間違ったモラルは必ず時代の流れと共に、正されていきます。
アホはいつまでものさばることはできません。
この本は、きっとその一助になるでしょう。
ぼくの娘も美術の世界で生きていこうと思っています。こうした被害に遭わないように、娘にもよく話を伝えておこうかな。
大事なことがたくさん書かれた本です。
みなさんにおススメします。
発売は1月10日。もうちょっとお待ちくださいね。
在日韓国人になる 移民国家ニッポン練習記(林 晟一) ― 2023年01月04日 17時27分09秒
在日韓国人・朝鮮人の姿を戦後から現在まで綴っています。
知らないことがたくさん書かれていて、とても勉強になりました。
在日コリアンを論じることは、日本人・日本文化を論じることでもあると思います。
民族的マイノリティーというフィルターを通すと、日本がどういう国なのかが見えてきます。
興味のある方は、ぜひ、読んでみてください。
なお、この本の帯には「アカデミック・ノンフィクション」というコピーがついていますが、これは要は「評論」ということですよね。
評論もノンフィクションの一分野ですが、こういうコピーはあまりよくないと思います。もっと注目される表現があるような気がします。
知らないことがたくさん書かれていて、とても勉強になりました。
在日コリアンを論じることは、日本人・日本文化を論じることでもあると思います。
民族的マイノリティーというフィルターを通すと、日本がどういう国なのかが見えてきます。
興味のある方は、ぜひ、読んでみてください。
なお、この本の帯には「アカデミック・ノンフィクション」というコピーがついていますが、これは要は「評論」ということですよね。
評論もノンフィクションの一分野ですが、こういうコピーはあまりよくないと思います。もっと注目される表現があるような気がします。
さようなら、清水文七先生 ― 2023年01月04日 19時43分51秒
分子ウイルス学教室の元教授、清水文七教授がお亡くなりになったことを知りました。90歳でした。
ぼくの人生で最大の恩人を一人あげるとすれば、それは清水先生です。先生に対するご恩の気持ちは歳を追うごとに高まっていきます。
ぼくは小児外科医になって3年目に大学院に進学しました。分子ウイルス学教室で神経芽腫のがん遺伝子の研究をしたのです。
先生の教室のメインテーマは、ヒトパピローマウイルスでした。
ぼくだけが異なったテーマで研究させていただいたのです。
清水先生と、指導教官だった白澤先生とぼくの三人で、毎週読書会をしました。がん遺伝子 N-myc に関する世界中の英語論文をぼくが読んで、二人の先生から質問を受けるというスタイルでした。
清水先生は、ぼくを鍛えると同時、ご自身も神経芽腫のがん遺伝子について勉強されたのです。
二人の先生のご指導のおかげでぼくは4年間に4本の英語論文を書くことができました。
いや、それ以上に科学的な考え方を鍛えていただきました。
このことは、ぼくがこれまで35年間医者をやっている中で、臨床医としての基盤になっています。
先生の最大の業績は、Vero 細胞を世界中に広めたことです。
同僚の安村美博先生が樹立した不死化したアフリカミドリザルの腎臓細胞には、多くのウイルスが感染することができます。
つまり未知のウイルスが発生したときに、Vero 細胞を使えば、そのウイルスを感染・増殖させ、分離して同定することを可能にするのです。
2019年12月に武漢で発生した肺炎。研究者たちは、Vero を使いウイルスを捕らえました。これが新型コロナウイルスです。
HeLa 細胞と並び、世界で最も有名な細胞株が、Vero 細胞です。
千葉大医学部が世界に誇ることのできる最大の業績でしょう。
虎は死して皮を残すと言いますが、Vero 細胞は文字通り永遠に生き続けます。
ぼくも一生涯先生の優しさと科学に対する真摯さを忘れないと思います。
どうぞ安らかにお眠りください。
夜の研究室での先生の言葉が今でも耳に残っています。
「どうですか、松永君? 何か新しいことは?」
「ちょっとどうかね、少しビールでも飲みますか?」
いずれぼくも追いかけます。また、ビールを飲みましょう。
ぼくの人生で最大の恩人を一人あげるとすれば、それは清水先生です。先生に対するご恩の気持ちは歳を追うごとに高まっていきます。
ぼくは小児外科医になって3年目に大学院に進学しました。分子ウイルス学教室で神経芽腫のがん遺伝子の研究をしたのです。
先生の教室のメインテーマは、ヒトパピローマウイルスでした。
ぼくだけが異なったテーマで研究させていただいたのです。
清水先生と、指導教官だった白澤先生とぼくの三人で、毎週読書会をしました。がん遺伝子 N-myc に関する世界中の英語論文をぼくが読んで、二人の先生から質問を受けるというスタイルでした。
清水先生は、ぼくを鍛えると同時、ご自身も神経芽腫のがん遺伝子について勉強されたのです。
二人の先生のご指導のおかげでぼくは4年間に4本の英語論文を書くことができました。
いや、それ以上に科学的な考え方を鍛えていただきました。
このことは、ぼくがこれまで35年間医者をやっている中で、臨床医としての基盤になっています。
先生の最大の業績は、Vero 細胞を世界中に広めたことです。
同僚の安村美博先生が樹立した不死化したアフリカミドリザルの腎臓細胞には、多くのウイルスが感染することができます。
つまり未知のウイルスが発生したときに、Vero 細胞を使えば、そのウイルスを感染・増殖させ、分離して同定することを可能にするのです。
2019年12月に武漢で発生した肺炎。研究者たちは、Vero を使いウイルスを捕らえました。これが新型コロナウイルスです。
HeLa 細胞と並び、世界で最も有名な細胞株が、Vero 細胞です。
千葉大医学部が世界に誇ることのできる最大の業績でしょう。
虎は死して皮を残すと言いますが、Vero 細胞は文字通り永遠に生き続けます。
ぼくも一生涯先生の優しさと科学に対する真摯さを忘れないと思います。
どうぞ安らかにお眠りください。
夜の研究室での先生の言葉が今でも耳に残っています。
「どうですか、松永君? 何か新しいことは?」
「ちょっとどうかね、少しビールでも飲みますか?」
いずれぼくも追いかけます。また、ビールを飲みましょう。
『患者が知らない開業医の本音』1月18日発売 ― 2023年01月10日 08時19分52秒
『患者が知らない開業医の本音』(新潮新書)
発売まであと1週間。1月18日発売です。
貯金わずか、経営ノウハウゼロの大学病院医師がクリニックを作りました。
開業してみればそこは医療のワンダーランドでした。
七転八倒のドキュメントです。舞台裏のリアルを書きました。
笑える話も、役立つ話もあります。
ぜひ、予約してください。
お友達にも教えてあげてくださいね!
https://amzn.to/3GuaNg9
よろしくお願いします。
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開業してみればそこは医療のワンダーランドでした。
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ぜひ、予約してください。
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よろしくお願いします。
少子化問題をどう解決するか ― 2023年01月11日 21時39分38秒
子育て関連予算を倍増するなど、今度の国会は「子ども国会」になりそうです。
自民党は今になって少子化問題で騒ぎ始めましたが、こうなってしまった責任をどう取るんでしょうか?
出生率が2.0を切ったのは1975年です。
つまり今から50年近く前から少子化は始まっていたのです。
出産一時金を増やすとか、児童手当を増やすとか、学費の無償化などが論じられていますが、それで少子化は止まるでしょうか?
完結出生児数という言葉があります。これは夫婦が、何人の子を持ったかの平均値です。
実はこの値はそんなに極端に下がっていないのです。
現在は、1.94くらいです。
つまり結婚さえすれば、2人近くの子どもを持つのです。
では問題はどこに?
それは生涯未婚率です。
2022年のデータで、男性は28.3%、女性は17.8%に昇っています。
要するに、日本の若者は結婚しなくなったのです。
これでは少子化が進むのは当然です。
独身の若者は、多くの場合、親と同居しているというデータもあります。つまり、住宅費や食費がかからないわけです。
これは裏を返せば、日本の住宅費や食費が高すぎて、若者が独立できないのです。
若者が独立するとすれば、最初は賃貸住宅でしょう。しかし日本は、賃貸物件に対する補助がなく、支払い金額が高価です。
住宅控除のようなものがない。
したがって賃貸物件に住み、独立すると、貯金が貯まっていかない。
すると、結婚もできないのです。
出産一時金とか、不妊治療の保険医療化などでは少子化は改善しません。
若者が独立して家庭を構えられるように、国が支援していかないとこの問題は解決しないのではないでしょうか。
自民党は今になって少子化問題で騒ぎ始めましたが、こうなってしまった責任をどう取るんでしょうか?
出生率が2.0を切ったのは1975年です。
つまり今から50年近く前から少子化は始まっていたのです。
出産一時金を増やすとか、児童手当を増やすとか、学費の無償化などが論じられていますが、それで少子化は止まるでしょうか?
完結出生児数という言葉があります。これは夫婦が、何人の子を持ったかの平均値です。
実はこの値はそんなに極端に下がっていないのです。
現在は、1.94くらいです。
つまり結婚さえすれば、2人近くの子どもを持つのです。
では問題はどこに?
それは生涯未婚率です。
2022年のデータで、男性は28.3%、女性は17.8%に昇っています。
要するに、日本の若者は結婚しなくなったのです。
これでは少子化が進むのは当然です。
独身の若者は、多くの場合、親と同居しているというデータもあります。つまり、住宅費や食費がかからないわけです。
これは裏を返せば、日本の住宅費や食費が高すぎて、若者が独立できないのです。
若者が独立するとすれば、最初は賃貸住宅でしょう。しかし日本は、賃貸物件に対する補助がなく、支払い金額が高価です。
住宅控除のようなものがない。
したがって賃貸物件に住み、独立すると、貯金が貯まっていかない。
すると、結婚もできないのです。
出産一時金とか、不妊治療の保険医療化などでは少子化は改善しません。
若者が独立して家庭を構えられるように、国が支援していかないとこの問題は解決しないのではないでしょうか。
死刑のある国で生きる(宮下洋一) ― 2023年01月11日 23時20分48秒
これは大変クオリティーの高い作品でした。
テーマは簡単に言えば、死刑は是か非か。昔からあるテーマなので、あまり期待しないで読みました。
ところが、その取材が広く、深く、また文献的考察も十分で、宮下さんの思索も非常に深く練られていました。
ぼくはこれまで宮下さんの本を何冊も読み、書評も週刊現代に書いたことがあります。
これまでもいい本を出してきましたが、今回はちょっとそれらを突き抜けた感があります。
本の終盤で、殺人事件の被害者遺族にインタビューする場面などは、思わず引き込まれました。
よく話が聞けたものです。
また、フランスでの「現場射殺」という死刑の変形のようなものは、日本でなぜ死刑制度が存置しているかの説明になっているように思えます。
結局死刑制度は宗教と強く関係しており、「赦し」という宗教観念のない日本をキリスト教圏と同様に考えるのは無理がありそうです。
また、世界で最も治安のいい国だからこそ、死刑が残り続け、個人の感情というよりも「地域」の感情が死刑を維持しているのかもしれません。
ノンフィクション作品としては一つの到達点に行き着いていると思います。
ぜひ、おススメします。読んでみてください。
テーマは簡単に言えば、死刑は是か非か。昔からあるテーマなので、あまり期待しないで読みました。
ところが、その取材が広く、深く、また文献的考察も十分で、宮下さんの思索も非常に深く練られていました。
ぼくはこれまで宮下さんの本を何冊も読み、書評も週刊現代に書いたことがあります。
これまでもいい本を出してきましたが、今回はちょっとそれらを突き抜けた感があります。
本の終盤で、殺人事件の被害者遺族にインタビューする場面などは、思わず引き込まれました。
よく話が聞けたものです。
また、フランスでの「現場射殺」という死刑の変形のようなものは、日本でなぜ死刑制度が存置しているかの説明になっているように思えます。
結局死刑制度は宗教と強く関係しており、「赦し」という宗教観念のない日本をキリスト教圏と同様に考えるのは無理がありそうです。
また、世界で最も治安のいい国だからこそ、死刑が残り続け、個人の感情というよりも「地域」の感情が死刑を維持しているのかもしれません。
ノンフィクション作品としては一つの到達点に行き着いていると思います。
ぜひ、おススメします。読んでみてください。
『患者が知らない開業医の本音』、見本が来た! ― 2023年01月12日 19時59分45秒
『患者が知らない開業医の本音』(新潮新書)、見本が届きました。感激です!
新しい本に出会える瞬間はいつも本当にうれしいです。
https://amzn.to/3kfjWl6
発売は、1月18日です。もう少し待っててくださいね。
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『患者が知らない開業医の本音』、発売です ― 2023年01月18日 09時09分07秒
【急告】
本日、『患者が知らない開業医の本音』(新潮新書)が発売になりました。
全国の書店から、またネット書店からお求めください。
ココカラ→ https://amzn.to/3QP4msN
ぜひ、応援してください!
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読売新聞に広告が出ました! ― 2023年01月19日 20時05分03秒
↑ クリックで拡大。
昨日発売になった『患者が知らない開業医の本音』。
https://amzn.to/3WnpfMM
本日、読売新聞に大きく広告が出ました。
なんだか古市さんに圧倒されていますが(笑)、売れ行きは大変順調です。
よかったら、ぜひ、手に取ってみてください。
おもしろいです(きっぱり!)。
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誰も書かなかった玉城デニーの青春 もう一つの沖縄戦後史(藤井 誠二) ― 2023年01月21日 21時14分20秒
ノンフィクションのお手本のような作品でした。
数多くの人にインタビューを重ね、言葉を丁寧に拾っていきます。
その結果積み上げたものは、沖縄県知事・玉城デニーさんの青春でした。
なるほど、政治家の玉城さんに関しては最後の方でちょっとだけ触れて、彼の青春を活写したわけですね。
ありそうで、なかなかない発想の1冊だと思います。
確かに「誰も書かなかった」と言えますね。
決して派手な本作りではありませんが、こういう良質なノンフィクションが高い評価を受けてくれるとうれしいですね。
玉城さんに関心がある人も、そうでない人も、人を描くという本に興味がある方はぜひ、読んでください。
おススメします。
それからこの本のカバー。玉城さんの写真、いいですね。
数多くの人にインタビューを重ね、言葉を丁寧に拾っていきます。
その結果積み上げたものは、沖縄県知事・玉城デニーさんの青春でした。
なるほど、政治家の玉城さんに関しては最後の方でちょっとだけ触れて、彼の青春を活写したわけですね。
ありそうで、なかなかない発想の1冊だと思います。
確かに「誰も書かなかった」と言えますね。
決して派手な本作りではありませんが、こういう良質なノンフィクションが高い評価を受けてくれるとうれしいですね。
玉城さんに関心がある人も、そうでない人も、人を描くという本に興味がある方はぜひ、読んでください。
おススメします。
それからこの本のカバー。玉城さんの写真、いいですね。
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