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ドキュメンタリーの舞台裏(大島 新)2022年12月03日 22時06分06秒

ドキュメンタリーの舞台裏
現在、ドキュメンタリー映画で大変ホットな大島監督の本です。大変おもしろく一気に読んでしまいました。
この本の最初の方で、プロデューサーとディレクターの関係性について書かれています。
これってまさにノンフィクションを書くときの、作家と編集者の関係と同じです。
必死になって作家は原稿を書きますが、編集者によって書き直しを命じられたり、まるごとボツにされたり。
そういう関係性がそっくりだと思いました。

この本の中で、大島監督は3人の映像作家について解説しています。是枝監督、森達也監督、原一男監督です。
言われてみれば、ぼくはこの3人の作品が好きで、そうかなるほど、ノンフィクション本が好きな人間はドキュメンタリー映画も好きなんだと、あたり前かもしれませんが、つくづくそう思いました。

ぼくはノンフィクションを書くときに、自分がビデオカメラを持っている気持ちで筆を進めます。読み手の眼前に、ぼくが見た世界の絵姿が浮かび上がるように書くのです。
だから、本を書く上で「人称」の問題は非常に重要で、ぼくには強い拘りがあります。

本の最後で原監督と大島監督の対談のことが書かれていました。映画『香川一区』で、小川淳也さんが当選したシーンを、原監督は、なぜマルチカメラで撮らなかったのかと疑問を呈していました。
ああ、なるほど。
大島監督は1台しか使っていません。これはノンフィクション文学で言えば、「一人称」で世界を見ているという視点になります。
大島監督も「一人称」にこだわったのだと思います。原さんは「神の視点=複数の3人称」でドキュメンタリーを作りたい人なのでしょう。

この本の文章には大島さんの人柄がよく出ていました。柔らかくて、腰が低いけど、自分の考えがしっかりと有って、謙虚な人だなと感じました。
今後ドキュメンタリー映画を目指す人・・・ではなく、すべての人に読んでほしいと思いました。
おススメします。

亀裂 創業家の悲劇(高橋 篤史)2022年12月07日 22時14分30秒

亀裂 創業家の悲劇
同族経営の創業家が、内部の争いによって壊れていく過程を描いた経済ドキュメントです。
300ページに満たない薄い本ですが、内容はぎっちり詰まっていました。
相当、取材が分厚いのでしょう。
ぼくは、はっきり言って経済に関する知識が全然ないので、経済に関する専門的な記述になるとちょっと理解できない部分もありました。
でも、そうした小さいことよりも、なぜ人は失敗するのかという大きなことに興味があり、惹きつけられて読みました。
会社とは誰のものかというのも、隠れたテーマの一つになっていると思います。

大学病院の医局(教室)もそうですが、教授になるのは45〜50歳くらいがちょうど良くて、10年もやれば引退して後輩に道を譲るべきじゃないでしょうか?
トップが15〜20年も君臨するというのは長すぎると思います。
空気も澱むし、リーダーは新しいアイデアを出せないし、改革は困難になり、必ず停滞します。
人はなかなか引き際を自分で判断できないんですよね。
そのあたりが失敗の本質ではないでしょうか?

ぼくは成功の物語よりも、失敗の論理に興味があります。
失敗には学びがありますから。成功なんて、ある意味、運みたいなものが多いと思いますよ。
おもしろく読みました。みなさんにおススメします。

視聴できます!!2022年12月09日 00時18分41秒

『障害のある子と共に生きる社会を目指して』
  ↑ クリックで拡大。

船橋市・第17回市民のための講演会。

本日、12月9日(金)からYouTubeで視聴できます。
テーマは『障害のある子と共に生きる社会を目指して』。
ぼくが60分話します。以下のサイトから、申し込んでください。

https://www.city.funabashi.lg.jp/event/seminar/p100360.html

来年の1月10日まで視聴できます。
よかったらご覧になってください。

プリズン・サークル(坂上 香)2022年12月12日 20時58分03秒

プリズン・サークル(坂上 香)
準備と撮影に10年をかけた映画『プリズン・サークル』の書籍版です。
罪を犯した受刑者が、刑務所の中でお互いの体験を語り合うことで、更生していくプログラムを描いています。
その内容も興味深いのですが、筆者の語り口が大変豊穣で、映像作家って文章もここまで書けるのかと大変驚きました。

長い時間をかけて作り上げた映画と本ですから、その内容の濃さは言うまでもありません。
Amazonのレビューでも大変高評価です。
人とは何を探求するために、読むべき価値のある1冊ではないでしょうか。
興味を持たれた方は、ぜひどうぞ。

朝日新聞「耕論」に異論2022年12月12日 21時12分37秒

11月30日の朝日新聞「耕論 知る 出生前診断」を読みました。
三人の方がそれぞれの立場で出生前診断について意見を述べていましたが、いずれも母親の知る権利に意見が偏っていました。

確かにいまの時代、胎児の状態について母親には知る権利があることは間違いないでしょう。
したがって検査を受ける権利もあるでしょう。しかし出生前検査はそれほど単純なものではありません。

意外に知られていませんが、障害を理由に胎児を中絶することは現在の法律で禁じられています。
障害者の人権がこうした形での中絶によって脅かされるからです。
1974年に障害児を中絶する胎児条項は国会での議論を経て廃案になっています。

また、胎児の生きる権利をどう考えたらいいのでしょうか。
2015年のNHKの世論調査によれば、いのちの始まりは、胎児あるいはそれ以前と考える人が91%にも達しています。
安易な中絶はないという意見もありますが、いのちの始まりを葬ることには道徳的な問題をともなうと言わなければなりません。

障害胎児を中絶すことはやはり優生思想の一つの形ではないでしょうか? 個人がどう考えようと個人の自由という意見もあります。
しかし、個人の考えは、必ず社会の考えとなって広がり、やがて定着します。
知る権利という観点を強調しすぎる出生前診断の議論には危うさがあるようにぼくには感じられます。

ある一面から出生前診断を論じるのであれば、違った角度から論じる意見も紙面に出して欲しかったです。

あれから、およそ8年2022年12月14日 21時40分08秒

あれから、およそ8年
『ぼくとがんの7年』を書いて、ちょうど1年が経ちました。
本日、千葉医療センターを受診して検査を受けました。
何回受けても膀胱鏡は緊張する検査です。しかし耐えられないほどの痛みではありません。
先生もベテランだし。

で、結果は異常なし。よかった。
最後に手術して4年半が経過しました。そろそろ安全域に入ってきたかな。
1年後にまた検査を行いますが、その後のフォロー(検査)をどうするかは、そのときに相談しましょうという話になりました。

しかしまあ、よくこんな面倒臭い病気と闘いながら、これまでクリニックを運営できたものです。
当時50代でしたから、頑張れる体力があったのかな。
65歳まで働くことが当たり前になったこの時代ですから、がんと闘病しながら働く人も増えると思います。

どうやってそこを乗り越えるか。
ぼくの本はそうしたことに対するちょっとしたヒントになっていると思いますよ。
面白い本ですので、未読の人はこの機会にぜひどうぞ。

週刊読書人「2022年の収穫」2022年12月16日 19時28分38秒

週刊読書人「2022年の収穫」
今年も週刊読書人に「2022年の収穫」を寄稿しました。今年の3冊は次の通り。

村井理子『家族』
小林元喜『さよなら、野口健』
永田豊隆『妻はサバイバー』

全部、超おススメです。

映画『香川一区』2022年12月17日 22時52分10秒

映画『香川一区』
大島新監督の『香川一区』を観ました。
前作の『なぜ君』に負けず劣らない、骨太のドキュメント大作でした。
小川淳也さんの対立候補である平井卓也さんが結果として「悪役」に描かれていましたが、それは彼らがそういう態度をとるからであり、映像はありのままを映し出していました。

平井陣営は、まるでチ◯ピラかゴロ◯キのような人を雇っているんですね。ああ、怖かった。
平井さんは選挙戦を不利と見て焦っていたのかもしれませんが、こういう映画に仕上がってしまったら、今後、有権者に相当印象が悪いんじゃないでしょうか。

しかしまあ、自民党の政治(選挙)のえげつなさを心底感じました。これは政権交代は簡単じゃないですね。
もうシステムとして自民党が勝つようにできているんですね。
そんな中で小川さんはよく勝ったと思います。
「正直者がバカをみない」勝利。すばらしいじゃないですか。

一級品のドキュメンタリー映画でした。PR映画ではありません(笑)。

2022年の連合赤軍 50年後に語られた「それぞれの真実」(深笛義也)2022年12月18日 18時25分28秒

2022年の連合赤軍 50年後に語られた「それぞれの真実」
みなさんは連合赤軍事件を知っていますか?
今からは考えられないことですが、1970年頃までは、日本で革命が起きると信じ、命を懸けて闘争している人たちがいたのですね。
革命は幻となり、あさま山荘事件が終わってみると、仲間内の壮絶なリンチによる大量殺人が発覚しました。
なぜ、仲間が殺し合うのか? 世間はまるで理解できませんでした。

当時、左翼運動は、一般の人たちにもある程度のシンパシーを感じさせていたと思いますが、この事件で日本の左翼運動は事実上終わったのではないでしょうか?

本書は、その連合赤軍の生き残り、つまり服役を終えた人たちにインタビューするという超弩級のドキュメントです。
これはもう、おもしろいとか、おもしろくないとか超越しています。
ノンフィクションのある種、極北でしょう。読み応え十二分です。

版元は、清談社。申し訳ありませんが、知りませんでした。よくこういう企画を立てて、本として世に出したものです。
あっぱれですね。
売れ行きはどうなのか分かりませんが、ノンフィクションが好きな人には避けて通れない傑作です。

みなさんもどうでしょうか? おススメします。

新著『患者が知らない開業医の本音』が出ます!2022年12月21日 21時37分04秒

新著『患者が知らない開業医の本音』が出ます
ちょっと先ですが、年が明けて1月18日に新潮新書から『患者が知らない開業医の本音』という本を出します。
ぼくが開業医になったいきさつ。
開業医になって驚いたこと。
鼻血も来れば白血病も来る。おまけにクレーマーも来る(来なくていい)。
開業医は儲かるって本当か?
開業医の舞台裏をすべて明かします。

現在、Amazonなどネット書店で予約可能です。
https://amzn.to/3v5b57U
はっきり言っておもしろいです(キッパリ!)。
ぜひ、読んでみてください。