アクセスカウンター
アクセスカウンター

佐野眞一さんが亡くなった2022年10月14日 22時57分14秒

佐野眞一さんが亡くなった
9月26日に佐野さんが亡くなりました。75歳でした。
本日、朝日新聞と毎日新聞に追悼記事がでました。やはりノンフィクションの巨人として一世を風靡した作家だからでしょう。
ぼくは佐野さんにインタビューした経験があります。

講談社の『月刊現代』が休刊となり、その後を『g2』が継ぎました。『g2』はネットと紙の記事、さらに書籍を連動させた新たらしい企画でした。
ネット記事の中に編集部インタビューというコーナーがあり、ぼくがその聞き手を務めたのです。合わせて7人の作家さんに話を聞きました。

一人ひとり、みんな大ベストセラー作家で、いわゆる大物作家でした。でも佐野さんのインタビューがほかの人と違っていたのは、話を聞き終わったあとに、しばらく雑談をさせてもらったことです。2012年8月12日のことです。

まずは次回作の構想を聞かせてもらました。よくもまあ、次から次へと歌を歌うように言葉が出てくるものだと感心しました。
ノンフィクション作家は事実を丹念に集めていくという仕事が大きな部分を占めますが、語る部分が弱いとどうにもなりません。
佐野さんには「佐野節」と呼ばれる独特の言い回しがあって、読む者を惹きつけるのです。

それからノンフィクション作家は、歳をとって初めていいものが書けると言っていました。短詩形文学は若い天才の閃きで書けるが、ノンフィクションには人生経験が必要とのことでした。つまり、苦い文学と言っていました。これはぼくも現在、還暦になってよく分かります。

また当時、インターネットが文学に及ぼす影響について今ほど明らかでなかったので、佐野さんは「誰かがネットを総括しなければいけない」と持論を述べていました。
これも印象によく残っています。

「形容詞は腐る」とか「小文字を大事にする」か、佐野さんの哲学が、会話の中の随所にありました。インタビューは1時間くらい、雑談は30分くらいしましたが、本当に楽しい時間でした。
佐野さんの書いた傑作はいくつもありますが、ぼくは『東電OL殺人事件』が好きかな。最も佐野さんらしい作品のように感じます。
安らかにお眠りください。