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雨滴は続く(西村 賢太)2022年06月02日 09時46分53秒

雨滴は続く 西村 賢太
今年の2月、西村さんが突然お亡くなりになりました。心疾患だったようです。酒とタバコの毎日でしたから冠動脈疾患だったのでしょう。54歳でした。

ぼくは年にノンフィクションや専門書を100冊くらい読みますが、小説はほとんど読みません。
その例外が西村賢太さんです。彼の私小説はほとんどすべて読んでいると思います。

ある意味で表現手段が究極のワンパターンなのですが、そのワンパターンの中に豊富なバリエーションがあり、笑えます。
「根が〜〜にできている彼は」というフレーズが頻出しますが、〜〜の部分が本当に多彩なんです。よくぞこんな日本語を思いつくなという感じです。
結局のところ豊穣に語る作家なんです。

本書は未完の長編です。もしかして、これが完成していたら西村さんは執筆活動に終止符を打ったのでは?
というのは、この作品は、これまでの文筆活動を私小説として表現しているからです。
つまり自分を語るという意味で、最後のネタに手を出したなという感じです。

本書は出だしにちょっとキレがありませんが、だんだん面白くなっていき、2人の女の間で揺れるところなど、「北町貫多」のアホさ加減につい笑ってしまいます。
そしてフラれた腹いせに女を罵る言葉の汚さは、まあ、よくここまで書くなという西村さんの真骨頂です。
後半は一気に読みました。

未完ではあるものの、彼の文筆活動はその後も続くわけで、この作品が尻切れとんぼで終わっているという印象はありませんでした。
そういう意味でファンの方には強くおススメできる1作です。

実は、西村さんの本ってぼくの手元にほとんどないんです。
本の収容が常に限界点にあるため、小説は売ってしまうのです。でもこれを機会に文庫本を1冊ずつ買い戻してみようかな。
西村さん、今頃天国で宝焼酎を呑んでいるのかな。
筆を休めてゆっくりしてくださいね。