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ストーリーで語る(秋山 楓果)2022年02月15日 09時33分50秒

ストーリーで語る
面白くて一晩で読んでしまいました。
文章を書くことが苦手な筆者が、いつかnoteにブログを書きたいと、まずtwitterに挑戦します。そこからすべてが始まるのですね。
で、彼女のえらいところは、ストラテジーをしっかり組み立て、何を誰にどう書くのか、一生懸命に考えることです。
そして試行錯誤の中で、自分のスタイルを見つけていきます。
ああ、なんて真面目でひたむきな人なんだと思いました。

twitter でブレークした彼女は、noteを飛びこえて本書を書きます。
書いた彼女も立派ですが、本書を企画した田中里枝さんも見事ですね。
こうして自己実現していく筆者の姿は美しいとしかいいようがありません。
今後彼女がどんな発信をしていくのか、ちょっと目が離せないという感じですね。

今の時代、文章を書くということに多くの人が関心を抱いているような印象があります。
文章術は奥が深く、いろいろなアプローチがあります。
ぼくも書いてみようかな。
この本、みなさんにおススメです!

『運命の子 トリソミー』、重版!2022年02月16日 12時01分59秒

『運命の子 トリソミー』、重版!
重版、決まる!

2013年12月に発刊した『運命の子 トリソミー』が重版・4刷りになりました! なんと今頃です。8年も経っています。
編集部によれば、静かに長く売れているそうです。ありがたいじゃないですか。ううう(泣く)。

https://amzn.to/3sJFRBH

未読の方はこれを機会にぜひ読んでみてください。
3月7日、出来です。

超えるべき壁 横隔膜ヘルニア2022年02月17日 10時35分17秒

先天性横隔膜ヘルニアは、横隔膜に孔があり腸が胸の中に入ってしまう先天異常です。肺が圧迫されるので呼吸困難になります。治療は手術で孔を閉じることなんですが、実はそんな単純なことではありません。

肺が圧迫された状態で胎児期を過ごしますので、肺が育つことができません。すると肺高血圧という状態で生まれてきます。血液が胎児循環のまま、酸素化されない血液が全身を回りますので、全身チアノーゼになります。
胎児超音波によって病気を早期に見つければ、母体搬送で治療成績が向上すると考えられた時期がありました。ところが実際は逆でした。つまり死産になる運命だった子が治療を受けるようになったため、日本全体で治療成績が悪化したのです。

ところが最近、グループスタディーの努力によって、この病気に対して新しい呼吸器の使い方が開発されてきました。その結果、ECMOの適応も減っています。さらに治療成績が良くなることを願っています。

なぜ我々は生き残ったのか2022年02月17日 12時32分49秒

ある推計によれば、人類の誕生からこれまでに生まれた人間の数は、約5万年前に2人からスタートしたと仮定して、約1076億人なんだそうです。
現在、地球上には78億人が暮らしていますから、人類の歴史の中で、これまでにおよそ1000億人が死んだことになります。
その1000億人はどのように死んだのでしょうか?
生まれる数を死んだ数が上回ってしまえば、その種は絶滅します。恐竜のように。
どうして私たちは生き残ることができたのでしょうか?

一つの理由は食物連鎖の頂点に立ったからでしょう。
仮に恐竜が絶滅していなかったら、ヒトはすべて残らずエサになっていたかもしれません。

恐竜が絶滅した理由として、隕石の落下という説があります。
直径10キロ、重さ1兆トンの隕石が地球に衝突すると100万度以上の熱が放出されるそうです。
これによって気候変動が起き、恐竜は絶滅したとされています。

では人類にとって大きな災厄とはなんでしょうか?
東日本大震災では2万人近くの人命が失われました。
関東大震災では10万人が亡くなりました。
世界に目を向ければ、2010年のハイチの地震では20万人が死亡し、1970年のバングラデシュのサイクロンでは50万人が死んだそうです。

だけどもっと恐ろしいのは、政治的暴力(弾圧・粛正)や戦争です。
ポルポトは自国カンボジア全体を牢獄のようにしてしまい、200万人から300万人が亡くなったと言われています。
スターリンの粛正は1000万人以上。
毛沢東の大躍進政策では、5000万人の餓死者が出たという説があります。
20世紀は「戦争の世紀」で、総計で1億数千万人が死にました。ヒトラーは500万人のユダヤ人を含む1000万人以上を殺害しました。
人間にとって最も恐ろしい天敵は人間ということですね。

だけど、これでは1000億人には遠く及びません。
戦争は降伏によってやめることが可能だし、クーデターで政権が代わったり、軍事介入で圧政が停止したりすることもあります。
では歴史的に人類にとって最大の脅威は何だったのでしょうか?

それは疫病ではないでしょう。 
厚生労働省の「国民生活の動向」を読むと、戦前の日本では死因のトップは「胃腸炎」であり、「結核」です。
前者は、嘔吐下痢症で脱水から死に至るわけです。
後者の「結核」は、かつては死の病でした。
現代はがんが恐れられていますが、がんという病気はある意味、細胞の老化現象でしょう。
がんで死ぬということは寿命が尽きるということと同じことかもしれません。
歴史的に見れば感染症が人類の存在を脅かしてきたことは間違いありません。

14世紀のペストではヨーロッパの人口の8000万人のうち1/3〜1/2が亡くなり、そしてアジアまで広がった結果、7500万人から2億人が死んだとされています。
アステカ帝国は天然痘で滅びました。それだけでなく、16世紀に天然痘で亡くなった人は5000万人以上とされています。
100年前のスペイン風邪では世界で4000万人以上が死にました。
AIDSで亡くなった人は2000万人以上です。

そして現在、新型コロナウイルスによって世界で約580万人が亡くなっています(2022年2月16日 )

公衆衛生の向上・ジェンナーの種痘の普及・抗生剤の発見・PCRの発明・mRNAワクチンの開発が無ければ、人類は絶滅したかもしれません。
つまり、ヒトは病原微生物との闘いに、打ち克ち、あるいは「引き分け」て、今があるのではないでしょうか。 いや、敗れる可能性も考えておいた方がいいかもしれません。

(2013年に書いた記事をリライトしました)

病理医ヤンデル先生の医者・病院・病気のリアルな話(市原 真)2022年02月19日 16時10分06秒

病理医ヤンデル先生の医者・病院・病気のリアルな話
こういう表現の仕方があるのかとかなり驚きました。
病理医ヤンデル先生が、病理のことを・・・ではなく、医療全般について語っていきます。メディカル・エッセイですね。
本の構成がおもしろくて、章ごとに編集者からお題がでます。
たとえば、「大学病院と町のお医者さんの違いは?」とか。
それにどう答えるのかも一つの見どころです。

ヤンデル先生の答えは、半分ひねったくらいの凡人の答えではありません。1回転ひねったような嫌味な解説でもありません。
3 / 4 回転くらいの絶妙の味が出ているんです。
いや、こんな発想はちょっと湧かないな。
だいたいぼくは凡人のどんじり医なので、ヤンデル先生のようには言葉が豊潤に出てきません。
先生はトクトクと湧水が溢れるようにマジックワードが出てきます。
「開業医は一言でいうならば野心に満ちあふれている」そうです。そうか、ぼくは野心満々であるべきなのか。どうやらぼくは、開業医としても、どんじりのようです(笑)。

医者に限らずたくさんのコメディカルがヤンデル先生の医療シアターに登壇しますが、先生は誰も傷つけないで書くんですよね。変に茶化したりしないんです。
素顔の先生のことは知りませんが、優しい人なんだと思いました。

もたもたしながら読んでいるうちに、だんだんヤンデル節に乗せられて、ぼくは本の中で踊っていました。
世の中には才能のかたまりみたいな人がいるんだと発見しました。
ぼくにはとても書けない本でした。
(そもそも依頼が来ない)
みんさんもどうぞ楽しんでください。おススメします。

超えるべき壁 鎖肛2022年02月21日 11時40分27秒

小児外科医にとって鎖肛ほど難しい手術が求められる疾患はないかもしれません。鎖肛は単に肛門が生まれつき無いだけではありません。排便機能が欠けているのです。

従来の手術方法では、鎖肛の子どもは術後に便失禁をきたすことが稀ではありませんでした。従来の理解では、上下2箇所のリング状の筋肉が直腸を取り巻いていることで排便をコントロールしていると考えられてきました。

ところがPena先生が、2個のリングの間には垂直に走る筋肉があることを見出し、新しい術式を開発しました。これによって術後排便機能は劇的に改善しました。

ただ、100点満点ではありません。排便機能は人間の一生に関わる問題です。さらに良い結果を目指して、小児外科医の努力はまだ続きそうです。

月刊誌『Wedge』に登場!2022年02月21日 20時58分27秒

月刊誌『Wedge』に登場!
月刊誌『Wedge』の「時代をひらく新刊ガイド」で『ぼくとがんの7年』に関して稲泉連さんにインタビューしていただきました。

大変光栄です。
なお、この雑誌は新幹線のグリーン車に置かれているそうです。もちろん一般販売もされていて、発行部数は12万部だそうです。
それにしても、稲泉さん、本当にインタビュー記事がうまいなあ。

ぼくもまだまだ修行の身です。がんばろう!

サラ金の歴史-消費者金融と日本社会(小島 庸平)2022年02月22日 22時08分13秒

サラ金の歴史-消費者金融と日本社会
2021年の新書大賞をとった作品です。
まず、目の付け所がいいですよね。
サラ金の歴史です。
ただ単に、サラ金の「悪」をぶっ叩くのではなく、サラ金100年の歴史を経済学の観点から紐解いていきます。
サラ金は栄華を誇った時期もあり、冬の時代もあり、また盛り返した時期もあり、波瀾万丈な職種です。
今でも無くなっていないのは、すべて「悪」で説明できないからでしょう。
あるときには人助けになっていた面があることは否定できません。
しかし社会的に多くの問題を生み出していたのは、ここでぼくが言うまでもないでしょう。

そう言えば、あったな、「むじんくん」。それ以外の自動契約機は記憶にないけど、本書によれば、「いらっしゃいまし〜ん」「お自動さん」「¥enむすび」「ひとりででき太」などがあったそうです。ウケる。

膨大な資料に基づいて書かれた大作です。表現にちょっと冗長な部分もありましたが、なかなか書けるような本ではありません。
著者も立派ですが、中公新書もえらいと思います。
新書大賞は当然でしょう。おススメします。

着床前診断に歯止めを2022年02月23日 08時57分49秒

体外受精させた受精卵の一部を使って遺伝子解析を行なうのが着床前診断である。受精卵を選別することによって、選択的人工妊娠中絶を避けることができる。日本産婦人科学会が2021年4月に公表した着床前診断の適応変更に関する最終報告では、対象となる疾患が拡大されることになった。

これまでは成人になるまでに命を落とす可能性が高い遺伝性疾患にのみ着床前診断が適応とされてきた。今回の変更によって、成人になるまでに発症する「有効な治療がない疾患」や「高度で負担の大きい治療を要する疾患」までが対象に含まれるようになった。また、審査も各施設の倫理委員会に委ねられるようになった。

健康な子どもを授かりたいと思う気持ちは、誰しもが思う当たり前の感情である。これを否定することは誰にでもできない。したがって遺伝性疾患の保因者である親が、着床前診断を受けたいと言えば、納得する国民は多いだろう。特に母親の気持ちを大事に考える産科医は賛成の立場を取ることが多い。

しかし人間の持つ原初的な欲求に対しては、常に倫理的な歯止めをかける必要があることも忘れてはならない。倫理とは、人の行いが善であるか否かを心の奥深くまで掘り下げて考える営みである。受精卵は、確かに人ではないかもしれない。しかし生命の萌芽であることは間違いない。受精卵を選別して破棄する行為は、人を大切にしないことにつながり、弱者を切り捨てることにつながる恐れがある。

そういった選択をした親が、いつの日か受精卵を破棄したことに罪悪感を抱かないであろうか。また、すでに年上の病気のきょうだいがいた場合、その子が着床前診断の意味を理解できる年齢になったとき、心に傷を負わないだろうか。それとも、親は着床前診断を受けたことを、きょうだいに一生隠すのだろうか。

遺伝性疾患の克服は現代医学の悲願である。着床前診断は過渡期の技術に過ぎないのかもしれない。そしてこの検査法は、結局家族に幸福をもたらさない可能性もある。検査を受けることは極めて個人的なことではあるが、その個人の行為に裏側に生命尊重への思いの弱さがあると、そうした思いの集積は社会全体に広がり一つの思想につながっていく可能性がある。

そのことを十分に踏まえて、学会は検査対象の拡大には慎重になってほしい。また、検査を希望する人も自分の心とよく向き合って、着床前診断によって家族が幸福になれるか深く考えてみてはどうだろうか。

開業医をやりながら作家もやってみた 21回2022年02月27日 09時09分03秒

m3.com 連載『開業医をやりながら作家もやってみた』第21回が掲載されました。

『発達障害に生まれて』を書いて大ヒットする話です。
よかったら読んでください。↓

https://www.m3.com/news/iryoishin/1019578

この本を書いたことで多くのことを学びました。