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誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論(松本 俊彦)2021年12月27日 23時09分22秒

誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論
アマゾンで非常に高評価なので、読んでみました。
大変文章がうまく、豊穣に語っていますが、同時に冗長とも言えます。
比喩や例え話が多く、こういう文章はぼくには書けないなと思いました。
ぼくは外科医だし、著者は精神科医ですからね。そういう違いが文章に出ていました。

この本は雑誌に連載された文章を1冊の本として編んだ作品です。
サブタイトルに「クスリとヒトの現代論」とありますが、そういう評論の部分は確かにありますが、学生時代の思い出とか研修医のころの逸話とかもあり、半生記の部分もあります。
全体として見た場合、それぞれの章の据わりがいいとは言いにくく、本の完成度はどうなのかなと正直思いました。
薬物依存症の患者は病気なので、懲罰よりも治療が必要であるという論と、学生時代の解剖実習の話や研修医時代に脳炎の診断をつけた見事な体験談とでは、ちょっと表現の目指す先が違い過ぎている印象があります。
論を立てるのか、青春記を描くのか、きちんと全体の骨格を決めて書き直していれば、もっといい本になったと思います。


ちょっと蛇足。
雑誌に連載した文章を1つの本にまとめることを必ずしも悪いと言っているわけではありません。ぼくもそういう本を何冊か出しています。
ただ、ぼくは連載をするときに、初回から最終回まで目次を作ってから書きます。つまり長編のエッセイを分割して書いているのです。
そうでない文章・・・つまり1回1回考えて書いた文章をエッセイ集として編むとなかなか良い本は生まれないと思いますよ。
違う意見もあるかもしれませんが。ただ、それでも全体を貫くテーマは必要だと思います。

著者のファンにはとても満足の1冊でしょう。そういった方にオススメします。