筆者は元朝日新聞の記者。だから文章は非常にしっかりしています。隙がないという感じです。
早稲田大学の川口大三郎君リンチ殺人事件を知っている人は、まずいないでしょう。
ぼくは知っていました。
立花隆の『中核VS.革マル』に出てくるからです。
筆者は川口さんの1年後輩。
革マルの暴力に対して「寛容」「非暴力」で闘った学生運動を指揮しました。
その闘争の過程の回顧録なのですが、あまりにも細かすぎて、また内容が絶望的すぎて途中で読むのが辛くなりました。
ぼくだったらさっさと退学したなとか思いました。
しかし終盤になって、筆者が闘いから「降りる」ところで、なんとも言えない共感・親しみ・同情みたいなものが湧きました。
そして彼は闘いから離れて社会に目を向け、新聞記者になります。そこらへんの挫折から再生の道のりが良かったです。
最後には、当時、革マルだった人間と「対談」をします。ここはやや冗長な印象もありますが、当事者の心理がとてもよく分かって有益でした。
本の結論として、「寛容」が「不寛容」を超えることについて、香港やミャンマーの民主化運動にまで話を広げます。
それが本の完成度を高めたのかどうか、ぼくには判断がつきませんでしたが、川口さんの事件から約50年を経て、筆者が事件に落とし前をつけたのはよく分かりました。
いい本です。オススメします。
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