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一八〇秒の熱量(山本 草介)2021年08月27日 11時43分59秒

一八〇秒の熱量
30歳を過ぎてデビューしたプロボクサー。成績はパッとしないB級選手です。強いパンチはなく、接近してドカドカとボディーに連打を打つだけ。対戦成績も勝ったり、負けたり。
ボクサーには定年があります。37歳の時点で、日本チャンピオンか世界ランカーになっていなければ引退となるのです。
36歳の彼は、あと7か月を残し、チャンピオンを目指します。

こう書けばまるでフィクションのように感じるでしょう。しかしこれはれっきとしたノンフィクションで、筆者である山本さんはテレビのディレクターでもあり、そのボクサーを密着取材しながら、彼の闘いを綴っていきます。
この本は、山本さんにとって最初の作品だということですが、文章がメチャクチャうまくて驚きます。ここまで書ける人はあまりいませんよ。
これはすごい大型新人です。
本業はテレビかもしれませんが、今後も書いて欲しいです。

さて、そのB級ボクサーは栄光を掴めたのか・・・。さすがにそれは書きません。ぜひ読んでみてください。
おススメします。

仲野教授の 笑う門には病なし!(仲野徹)2021年08月28日 15時00分46秒

仲野教授の 笑う門には病なし!
天下の大阪大学病理学教室の仲野教授によるエッセイです。
喜怒哀楽を表現する上で一番難しいのは、「楽」、つまり笑いをとって楽しませることですが、先生のエッセイ集はタイトル通りの出来栄えになっていました。

ある本の中に、コラムとエッセイの違いが書いてありました。それによると、コラムとは、何かに首を突っ込んで論じるもの、例えば「天声人語」のようなものですね。
そしてエッセイは何かに遭遇したり巻き込まれたときに、感じたり思ったことを書いていくこと、というわけです。

この本を読んでいて分かるのは、仲野先生の行動力です。あちこちに出かけるから、いろいろなものに遭遇するのです。
で、感受性豊かに想いが溢れていくのですね。
CoCo壱番館でカレーを食べて、普通はこういうエッセイは書けません。(ましてやあのタイトルは思いつかない)
大阪の人と東京の人では基本的に文化が相当違うと思いますが、その文化の違いは文章にも遺憾無く発揮されていて、ノリツッコミ的な流れが何とも心地いい。
角岡伸彦さんの文章もこんな雰囲気です。

だけど、楽しく笑っているだけでなく、大講堂で学生が後ろにかたまっているのを見て、講師に失礼やろ!と説教する場面とかは、ぼくはすごく好きです。
学生に対する教育姿勢が真剣なんですね。こういう先生にぼくも習いたかった。

ぼくもエッセイを書いてみたいけど、ぼくの文章は暗いものばかりで、ちょっと売り物にならないでしょう(笑)。
それに出不精だから、何にも遭遇しない。
でも発想を転換して、エッセイを書くために出かけるのはいいかも。ぼくも今年で還暦だから、ボケないためにいいんじゃないかな。
この本は一気に読まないで、少しずつ楽しむのがいいと思います。
おススメします。

牧師、閉鎖病棟に入る。(沼田 和也)2021年08月29日 21時49分52秒

牧師、閉鎖病棟に入る。
タイトルに惹かれて読んでみました。
閉鎖病棟とは、もちろん精神科病院の中の鍵のかかった病棟のことです。
脱走の恐れがあるとか、自害の恐れのある患者さんが入ります。
したがって牧師さんはどれほど重篤な精神疾患があって、それをどう筆で表現するのかに最大の関心がありました。
ところが、病名はアスペルガー障害。
まじですか?
そんなことで入院するわけないでしょ?
これはどういうことでしょうか。

ぼくは仕事柄、統合失調症の人にも鬱病の人にも会ったことが何度もありますが、ふつうは外来治療ですよね。
どうにも納得がいきません。
ただ筆者はキレやすい人であることは間違いないようで、自分のことをエキセントリックに○チガイと叫んでいました。
こういう文章を載せるのは、どうなんでしょう。
読んでいてますます訳が分からなくなりました。
ただこの本は文章もよく、病棟で出会った人たちのことも丁寧に描写しています。そういういい部分もありました。
ただ、閉鎖病棟がまるで刑務所のようになっていて、50年も入院している人がいるとか聞くと悲しくなります。
すべての患者さんが外来治療できるようになるといいですね。

あとこの本は紙が硬く、ページをめくるのに苦労しました。
そこは読みにくかったかな。