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起業の天才!: 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男(大西 康之)2021年07月07日 16時13分02秒

起業の天才!: 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男
500ページくらいの大作ですが、一気読みでした。
ぼくは以前に中公新書ラクレの『リクルート事件・江副浩正の真実』という本を読んだことがあります。リクルート事件という名前を聞いたことがない人はいないと思いますが、『〜〜の真実』を読んで、この事件とは何だったんだろうかと疑問を持ちました。
そしてそもそもぼくはリクルートという会社をよく理解していませんでした。
現在でこそ、リクルートという単語は市民権を得ましたが、事件当時、この言葉の意味を知っている人は稀だったと思います。

著者の大西さんは膨大な資料を元に本書を作り上げています。
そこには知らないことが山のようにありました。
江副さんは東大を卒業後、社会人の経験がないまま起業します。学生時代のアルバイトの続きだったとも思えますが、既存の社会システムに違和感のようなものがあったのかもしれません。
大学の教授の仕事の一つは学生の就職の斡旋。大学は企業と繋がり、人材の流れは固定化されていたわけです。
そこで江副さんが考えたのは、万人に自由に情報を与えることです。今日ではそんなことは当たり前でしょう。
われわれは就職するときに、ネットを使って希望の会社の情報をゲットします。希望の会社が見えていない人は、Indeed などの求人サイトを見て情報を仕入れるでしょう。

しかし、1980年代にはそういうシステムがありませんでした。マッチングという概念がなかったのです。求人情報は大学の教授のところにあるか、大手新聞の広告の中にしかなかったのです。
大西さんがくり返し述べていますが、江副さんは情報が新しいビジネスになることを知っていました。
つまりネットのない時代に Google のような世界を夢見ていたのです。
リクルート社がやったことは、コンピューターの巨人 IBM に闘いを挑んだアップルの ステーブ・ジョブスのようなものだったと言えるでしょう。

江副さんは企業に成功し、やがて不動産業に進出していきます。ここから少し危うくなっていきます。時代はバブルでしたから金が金を呼びます。ビジネス的に大成功を収めた江副さんは、一人のベンチャー企業の社長から、日本の新エスタブリッシュメントに変貌していきます。
つまり日本の大企業の経営者と肩を並べるようになるのですね。政界・財界に食い込み、自分のプレゼンスをどんどん肥大化させていきます。
政界のタニマチとしてリクルートコスモスの未公開株をばら撒きます。おそらくこれは賄賂でなかったと思います。ただし、グレーゾーンでした。
自分の成功を政界・財界に誇示したのでしょう。

しかし朝日新聞の報道をきっかけに検察は動かざるを得なくなります。検察はいったん勝負に出ると、100%勝つことを目指します。
江副さんは、今の時代であれば到底許されないような暴力的な取調べを受け、13年間の法廷闘争の末、有罪判決を受けます。

バブル崩壊後、リクルートと関連会社は1兆8000億の借金を抱えますが、そこから再生していきます。
そのパワーはどこから来るのでしょうか?
リクルートは上下関係の会社ではありません。社員の一人一人が経営者であり、当事者という会社です。江副さんは人材採用に毎年60億円を注ぎ込み、優秀な人材をかき集め、各人に目的意識を持たせました。そうした江副さんのDNAが今日でも生きているのでしょう。

しかし盛者必衰ではありませんが、既得権益を倒した者は、今度は自分が既得権益になってしまうのですね。ビジネスで最高の地位まで登りつめたからこそ、江副さんは事件を起こしたのでしょう。リクルートという会社が生き延びたのは、バブル崩壊後のどん底で学んだことが多かったからかもしれません。
リクルートは生き延びましたが、江副さんは倒れました。本作は、壮絶なドラマでした。

しかし、こういう本ってどうやって書くんでしょうか。感心しました。この本は何か賞を取るんじゃないでしょうか?
おススメです。

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