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アルツハイマー征服(下山 進)2021年04月03日 17時33分40秒

アルツハイマー征服
アルツハイマー病の治療薬開発をめぐるサイエンス・ノンフィクションです。
著者は下山進さん。編集者としても作家としても有名な方です。
日米を中心にワールドワイドに取材を重ね、科学論文を読み込んで仕上げた超巨編にしあがっています。
大変おもしろく読んだのですが、納得できない点も多々ありました。
最初にノンフィクションと書きましたが、この本はとてもドラマチックな表現が多く、例えば、「〇〇博士の胸に熱い思いが込み上がってきた」みたいな言い回しがたくさん出てきます。
これはその博士がインタビューに答えてそう言ったのでしょうか?
それとも著者が想像で書いたのでしょうか?
ぼくは後者であってはいけないと思います。こういう表現をするときは、「私の質問に答えて、〇〇博士は、胸を熱くしたと返事した」と書くべきだと思うのです。
ドラマ性を文章で付加しなくても、この本の内容自体が十分ドラマチックなのだから、もっとシンプルに書いていいというのがぼくの意見です。
結局その方が迫力が出ます。

著者にとって最新のサイエンスを理解し、描くのはそうとう難しいことだったでしょう。そして残念ですが、サイエンスをやった経験のない作家がサイエンスを語る限界は越えられなかったように見えます。
科学的な表現に関して、間違っている所がいくつもありました。
また、書いた内容が意味不明の文章もありました。例えば、
「APPをクローニングし、シークエンスを特定しライブラリーを確認して、21番染色体に関係する遺伝子があることをつきとめた」という文章は意味がわかりません。

ポジショナルクローニングでは連鎖解析が極めて重要ですが、連鎖解析という単語が出てくるだけで、実際にどのように解析がなされたのかがこの本ではまったく書かれていません。
家族性アルツハイマー病がなぜ重要かというと、家系図を作り、DNA多型マーカーで連鎖の相関を追っていくと、原因遺伝子の位置が分かるわけです。そこから目的の遺伝を(たとえば、DNAウォーキングで)同定していくのです。その過程がエキサイティングなのですが、それはまったく書かれていませんでした。

専門家の先生がこの本の原稿を事前に読んでくれたそうですが、きちんとしたチェックが入っていないように感じられます。そこは残念でした。
大傑作の一作と評価されてもいい本なのですが、もったいない点が目立ちました。
それからエピローグ に着床前診断の話がでてきますが、あれはない方がよかったです。それを言っちゃおしまい・・・という感じです。

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