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殺人罪に問われた医師 川崎協同病院事件 — 終末期医療と刑事責任(矢澤 曻治)2020年12月05日 22時07分14秒

殺人罪に問われた医師 川崎協同病院事件 — 終末期医療と刑事責任
川崎共同病院事件について、刑事責任を問われた医師の弁護士が書いた本です。
本事件は、喘息の重積状態から心肺停止になった患者を「植物状態」にあると判断し、家族の了解あるいは嘱託のもと気管内チューブを抜いた医療事件です。
抜管してそのまま命が果てていれば、この一件は刑事告発されなかった可能性があります。
ところが患者がえび反りになって苦悶したため、医師はセルシンとドルミカムを投与します。
しかしそれでも患者が苦しがっていたために、ミオブロックを投与して呼吸を停止させて死に至らしめたのです。
普通に考えれば、これは家族の嘱託による殺人です。
安楽死とは別です。
治療の停止や差し控えとも異なります。
いや、いわゆる慈悲死かもしれません。
この本は、被告の弁護士さんが書いていますので、医師の行為を正当な終末医療の一環と主張していますが、それは相当無理があるような気がします。
さらに言っておけば、抜管後に患者がえびぞって苦しむなんて「植物状態」とは程遠いと思います。
医師は患者の脳のダメージの程度を根本的に見誤っていたのではないでしょうか。
ミオブロックを投与したのは、被告の医師がパニックになっていたというのが実情ではないでしょうか。

裁判というのは、真実を明らかにするというよりも、検察と代理人が互いに「技術的に」勝とうとする闘いで、真理追求の場なのか大変疑問に感じます。

医療の終末のステージで、患者の人生の幕を閉じるような行為をした経験のある医師は多数にのぼると思いますが、ミオブロックやカリウムを投与した経験のある人は、まずいないはずです。