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大江健三郎全小説 第3巻 (大江健三郎 全小説)2020年07月14日 22時23分28秒

大江健三郎全小説 第3巻 (大江健三郎 全小説)
大江健三郎の本は高校生の頃に夢中になって読み、今でも時々猛烈に読みたくなります。
村上春樹さんの小説は数冊しか読んだ経験がなく、そのおもしろさを残念ながら理解することができません。日本人としてぼくは少数派ですね。村上さんがなぜノーベル賞の候補になるのか分かりませんが、大江の作品は日本の現代文学を代表していると十分に思えるので、ノーベル賞は当然だったかと感じます。

「全小説集3」を買い求めた理由は「セヴンティーン第2部・政治少年死す」が収録されているからです。
この作品は17歳になったばかりの政治少年の性と政治的苦悩を描いています。
雑誌「文学界」に発表当時、右翼団体から脅迫があり、文芸春秋は謝罪広告を出したそうです。
その後、書籍には収められず、今日まで幻の小説だったわけです。
講談社が大江の全集を発刊するにあたり、2018年に書籍に初めて収録されたのです。
したがって「政治少年死す」は、今回ぼくは初めて読みました。
言ってみれば、第1部の「セヴンティーン」を読んだ高校3年生の頃から、40年越しに続きを読んだという感じでしょう。

「セヴンティーン」は何と言っても出だしが良い。
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今日はおれの誕生日だった、おれは十七歳になった、セヴンティーンだ。
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この印象的なフレーズは40年以上経った現在でも鮮明に憶えています。
以前に読んだときは、ストレートでクリアな小説という印象でしたが、今再読してみると、直喩と暗喩に満ちた、まるで音楽を聴かせられるような文章です。

ぼくは文学評論家ではありませんから、大江のすべてを読んでいるわけでも、その文学性を正しく理解しているわけでもありません。
しかし、デビュー作の「奇妙な仕事」から「万延元年のフットボール」まではすべて読んでいます。
「万延元年のフットボール」の1つ前が「個人的な体験」で、そこまでは大江の文章は比較的読みやすかったと感じます。
「万延元年のフットボール」で明らかに作風が変わり、大江の文学は難解だと評されるようになります。
ぼくも「万延元年のフットボール」を読み終えて、大江文学はいったん卒業しました。
ノーベル賞受賞の力になったのは、「個人的な体験」〜「万延元年のフットボール」と聞いたことがありますが、実際のところはどうなんでしょうか。

しかし、「奇妙な仕事」を書いたのが22歳。
「万延元年のフットボール」が32歳。
これはすごいですね。早熟の天才ですね。
そして30歳を過ぎて、才能がまた一段開花していくのですから、人間の能力というのはどこまで奥深いのかと驚嘆します。
ぼくがこの歳になるまでの間に出会った最高の作家です。

みなさんも、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。