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ノンフィクションにだまされるな! 百田尚樹『殉愛』上原善広『路地の子』のウソ (角岡 伸彦)2020年01月04日 21時15分16秒

ノンフィクションにだまされるな!
百田尚樹さんの『殉愛』と上原善広さんの『路地の子』のウソを徹底的に批判した1冊です。
要は、ノンフィクションにウソは NGということです。
僕は前著は読んでいませんので、何も言えませんが、後者は読みました。
で、読んですぐに「これは作り話」だと思いました。
それは角岡さんが言うように事実の間違いが多数あるという話ではなく(僕にはそんな知識はない)、登場人物の会話などを読んでいると、これは話を作ったなとしか思えない箇所がたくさん出てくるのです。

僕もノンフィクションは何冊か書いています。
その際、インタビューはすべてICレコーダーに録音します。そしてテープを再生しながら文字を起こしていき、不要な部分を削ったり、分かりにくい表現には微修正を加えます。
それがノンフィクションの書き方です。
上原さんの文章はどう読んでも私小説で、おまけに小説として読んでも梁石日の「血と骨」にはるかに及びません。
彼は被差別部落の出身だそうですが、本当なのかと驚きます。つまり文化がないんですね、文章に。
その点、梁石日さんの文章には在日の文化の匂いがプンプンとしています。

『路地の子』を買う前にAmazonのレビューを読みました。絶賛の文章が並んでおり、この作品は何か賞を取るのでは?と書かれていました。
いや、それはない。この作品には一流の作家さんも引っかかったらしく、けっこうな著名人が絶賛しています。いや、それはない。ふだん、どういう本をどれだけ読んでいるのでしょうか。
ちょっとその人たちに対する尊敬の念が薄らいでしまいました。

しかし角岡さんの事実に対する厳しさは素晴らしい・・・と言ってもいいのですが、それは元新聞記者ですから、本人にしたら当然というところでしょう。
ある意味、事実に厳しく書いた方がノンフィクションライターは楽なのに、上原さんは何を考えたのでしょう?

僕は医師という立場にあって患者のことを書いています(このことに対する批判も受けたことがあります)。すると、許可を得て書いた文章もありますが、30年前の患者に関しては許可は取れない訳です。
そうした場合、プライバシー保護のために本旨を変えない範囲で(つまり僕が何を学んだかを変えない範囲で)、細部に変更を加えることがあります。
たとえば、男女とか、年齢とか。
そしてそのことを本の中に明記します。この辺は正直なかなかつらくて、できれば完全に事実を書きたいという気持ちがあります。しかしそれをやっていいのか、ま、訴訟にはならないとは思いますが、出版社に迷惑をかけたくないという気持ちもあり、苦しみながら書いています。
実際、『いのちは輝く』では、ウソか本当か分かりませんが、「自分は書かれた当事者だが、お前は黙って医者をやっていろ」とクレームのコメントをもらったことがあります。