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日本精神科医療史(岡田 靖雄)2019年07月17日 21時57分35秒

日本精神科医療史(岡田 靖雄)
この本も、ちょっと勉強の必要があって読みました。
読めない漢字が多々あり、自分の読解力がイヤになりました。
本書を読むと、精神科医療がある程度ちゃんとした形になるのは敗戦後だと分かります。
しかしそれは考えてみれば当然で、日本には戦後まで抗生剤がなかった訳ですから、きちんとした日本の医療の歴史など70年くらいです。
その半分近くをぼくは経験している訳ですから、考えてみると我ながら驚きです。
中世の日本で精神疾患が「もののけ」「きつね憑き」と考えられていたのは当然でしょう。
明治時代になっても、加持祈祷・民間療法薬・水(滝)療法が行われていたのも当然かもしれません。

明治政府には内務省があり、ここの衛生局が精神疾患者を担当しました。厚生省がまだ無い時代です。
病気を治療するという概念は非常に希薄で、内務省の警察官僚的発想によって患者は公安監禁隔離の対象となります。
で、それを家族に義務づけたわけですね。
江戸時代には、不穏状態にある患者さんは牢屋へ入れられたそうです。
自宅で監置していたケースは例外的だったそうです。

それが明治33年になって精神病者監護法によって、私宅監置になったわけです。
これが日本の精神科医療のプロトタイプであり、障害者を家族で抱え込むという文化もここから生まれたのかもしれません。

青い芝の会の小山正義さんの『マイトレァ・カルナ』を読むと、脳性マヒの患者が家族の恥として隠されていた実態がよく分かります。

とても良い本(値段も高い)だったのですが、漢字にはルビを振って欲しかったです。古い文章に対しては現代語訳も欲しかったです。資料的価値はとても高いと思いますが、あと10年、20年と時間が経つとあまり読まれなくなるのではと心配になります。