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オウム死刑囚 魂の遍歴 井上嘉浩 すべての罪はわが身にあり(門田隆将)2019年06月12日 16時04分25秒

オウム死刑囚 魂の遍歴 井上嘉浩 すべての罪はわが身にあり
500ページを超える大著ですが、読み出すと止まらないという感じです。
著者は政治的にコンサーバティブな人で、たぶんぼくみたいな人間とは馬が合わないと思いますが、そんなことはどうでもよく、、、実に文章がうまいのは間違いありません。
ストーリーテラーとして、最高レベルですね。こういう文章は、ベテランの書き手なら誰でも書けると思われがちですが、いえいえ、そんなことはありませんよ。
さらっとうまく書いています。
(ただ、「嘉浩は胸の動悸が抑えられなかった」などのように、想像で書いている部分はありました)

オウム事件というのは、現代ではやや風化している印象もありますが、現在地下鉄にゴミ箱がなくて不便なのはこの事件の影響です。
事件を詳しく知る世代はいまや高齢化しているでしょう。
ぼくのような老人には強烈なインパクトがあった事件ですが、裁判まで細かくフォローしていたわけではありません。
しかしながら、サリンの袋を傘で破った人が死刑になるのは理解できるものの、共謀しただけの人がなぜ死刑になるのか、ちょっと不思議に思っていました。
(逆に実行犯の林郁夫が無期懲役なのも不思議)
その不思議の中心にいたのが、本書の主人公の井上死刑囚です。
麻原を含め、多くの死刑が執行されたのは、ぼくの目から見ると、「死刑」という犯罪に対してではなくて「国家転覆罪」だったように見えます。

さて、本書は井上が捕まるまでの25年と、死刑囚として拘置所に囚われた23年が描かれます。
25年のオウムの生活は一気に読ませる作りになっており、23年の死刑囚としての時間は何とも重く深く、生きて贖罪することの意味と死刑制度の矛盾を、井上死刑囚の言葉を使いながら見事に描いています。
(ただし、著者は死刑制度に反対していないはずです)

オウムの犯罪の記録と思って読み始めた本でしたが、そうではありませんでした。人間の宿業みたいなものを深く抉った傑作でした。こういう本を読むと「時間を得した」といつも思います。

現在、講談社本田靖春ノンフィクション大賞の候補作に上がっていますが、超有力候補ではないでしょうか?
オススメです。

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