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「つなみ」の子どもたち 作文に書かれなかった物語 (文春文庫)森 健2019年03月17日 07時30分06秒

「つなみ」の子どもたち 作文に書かれなかった物語
これまでの長い読書歴で、単行本で読んだ本を文庫本で買い直したのは4冊だけです。
『精神と物質』(立花隆)
『こんな夜更けにバナナかよ』(渡辺一史)
『絵はがきにされた少年』(藤原章生)
そして本書が4冊目になります。

東日本大震災をどう描くか、ジャーナリストやノンフィクション作家であれば、誰もが考えたはずです。
本という小さな枠の中に、あの大津波をどうやって描くのか?
もしかしたら、映像の方が震災の全貌を表現できるかもしれません。
しかし映像は津波それ自体を視覚化できても、人間を表現することはできない。個人の生活とか、地域のコミュニティーを伝えることはできないんです。

そこで森さんが考えた手法が、子どもに作文を書いてもらうという方法です。この方法は、大震災を描くだけでなく、子ども自身を描き、家族を描き、地域社会を描いていくことになります。

言わば、紙という世界が、リアルの世界にまで広がり、復興の一助にまでなっている。子どもたちの、家族たちの心の再生に役立っているのです。
ある意味で、ジャーナリストの仕事が、それを超えていったと言えます。1冊の本が様々なムーブメントを引き起こしたのです。

ノンフィクション史に残る傑作です。未読の人はぜひどうぞ。