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自殺会議(末井昭)2019年01月12日 17時00分13秒

自殺会議 末井昭
これは大変面白い作品でした。
たしか前作の「自殺」では講談社エッセイ賞を取ったと記憶していますが、こちらも傑作です。
文学が描く究極が生と死とすると、自殺というのはその両者を一瞬でスイッチの切り替えをしてしまうものです。
純文学でもノンフィクションでも、自殺という問題を突き詰めていけば、何か人間という生き物の本質が浮かび上がってくるような気がします。
本作品の中では原一男さんとの対談が最も深くて考えさせられました。

ただ、この本が傑作ということを前提に敢えて言えば、A町と海部町の探訪記は思い切って割愛した方が本の出来栄えが上がったのではないでしょうか?
この文章自体はとても面白いのですが、やはり末井さんが自殺を巡って対談をくり返す方が良かったと思います。

そういう意味では、岩崎航さんとの対談も、内容が自死と少し逸れていた印象があります。
岩崎さんのことは、BuzzFeed News にたびたび登場するので、少しは知識がありましたが、この本を読んで大変理解が深まりました。それは非常に良かったのですが、やはり、重い病気を患っているひとに、自殺に関して対談を続けるというのは無理があるのかもしれませんね。

ぼくは10代の頃、田宮虎彦の「足摺岬」を読んで、自殺というものに怖れと同時に何か甘美な魅力みたいなものを感じ、少し頭から離れなくなった時期がありました。
青春とは、生きることと同時に死ぬことみたいな感覚に囚われました。
こうした人の心の動きはこれからも文学の魅力的なテーマになり続けるのでしょう。
非常に高く評価できる1冊だと思います。