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歌に私は泣くだらう―妻・河野裕子闘病の十年(永田 和宏)2018年02月10日 16時02分16秒

歌に私は泣くだらう―妻・河野裕子闘病の十年(永田 和宏)
これはちょっと凄い本です。180ページくらいの比較的薄い本ですが、その中に深い深い世界が広がっています。人間の書く文字によって、ここまで深く人というものを表現できるのかと強く心が揺さぶられます。めったに出会うことのできない見事な一冊です。

ご主人の永田和宏さんは細胞生物学者にして日本を代表する歌人。そして奥さんの河野裕子さんも日本で最高の歌人です。
奥さんは乳がんにかかり、その後障害から心に変調を来します。それでも夫婦は手を携えて困難を乗り越えていきます。
しかしやがて肝転移で再発。奥さんは精神的に一段階高い所に昇ったように、運命を受け入れながら、同時に最後の刻まで歌を詠み続けます。


わたくしはわたくしの歌のために生きたかり作れる筈の歌が疼きて呻く


癌が進行して主治医が抗がん剤をもうやめましょうという場面で、永田さんは激怒します。
ああ、すごいなとぼくは思いました。1分でも1秒でも長く生きて欲しいのですね。
モルヒネの増量も永田さんは拒否します。眠ってしまうと河野さんが歌を作れなくなるからです。
亡くなっていく奥さんが、ご主人に少しでも長生きして欲しいと願います。ご主人が長く生きれば、奥さんはご主人の中で一緒に長く生きられるからです。
こんな壮絶な純愛の姿を、ぼくはこれまでに読んだことがありません。この本は死ぬまで大事にします。

追記)電子書籍になっていることは評価しますが、出版社は紙の本で出版を続けて欲しい。わずか5年前の本が絶版なんて悲しすぎる。

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