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ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)金成 隆一2017年12月19日 22時52分51秒

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)金成 隆一
これは傑作ルポルタージュです。
「あの」トランプがなぜ大統領になることができたのか?
その理由を分析することは、すなわち現在のアメリカがどういう国になっているかを明らかにすることです。
筆者は150人もの一般市民にインタビューを重ねることによって今のアメリカをクリアに描き出しています。
こういう良書にはそう巡り会えるものではありません。

民主党の候補はヒラリー・クリントンでしたが、サンダースさんが旋風を巻き起こしたことを憶えている人も多いでしょう。
実はトランプの主張とサンダースさんの主張には重なる部分が多数あるのです。
本来、民主党支持者とはミドルクラスのブルーカラーの人たち。
共和党は富裕層や成功者たちによって支えられていました。
ところが今回の大統領選では「逆転」が起こりました。
民主党支持者たちが、トランプ支持に回ったのです。

それは五大湖近辺の中西部で顕著でした。
いわゆるラストベルト、錆びついた工業地帯ですね。
彼ら(彼女ら)は移民によって雇用を奪われたのです。つまりもうミドルクラスではなくなろうとしている。貧困層へ転落しかかっているのです。
こうした人々が、エスタブリッシュメントに対して猛烈な反感を覚える。その代表がヒラリーです。

アメリカン・ドリームという言葉は死語になっているという労働者達の嘆きと、彼らの生活苦の悲鳴がトランプ大統領を生んだのです。
わずか1%の富裕層がアメリカ全体の富の40%を独占しているこの状況を、どう解決すればいいのでしょうか?
日本はそこまでひどくありませんが、やがて同じ問題にぶつかる可能性は十分にあります。
なぜならば、日本は人口政策に失敗し、今後、人口が減少し、経済が縮小することが避けられないからです。
その時、日本は「鎖国政策」を転換して移民を受け入れるでしょう。そうすると、日本人はアメリカと同様に雇用を奪われる可能性があります。
今のアメリカの問題は、将来の日本の問題に重なるような気がします。
オススメの1冊です。ぜひどうぞ。