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がんは治療か、放置か 究極対決 (近藤 誠, 林 和彦)2017年07月02日 18時05分48秒

がんは治療か、放置か 究極対決 (近藤 誠, 林 和彦)
興味を持って読みました。
近藤誠さんの名前は誰でも知っているでしょう。
一方の林和彦さんは、最近になってじわじわとメディアに出てくるようになりました。
東京女子医大のがんセンター長ですね。
もともとは消化器外科医でしたが、現在は化学療法・緩和医療に力を入れているようです。

林先生は、僕からすると先生ではなく「和ちゃん」です。
ええ、ラグビー部の1学年先輩なんです。
親分肌で後輩の面倒見がとてもよく、本当に信頼できる人でした。
ラグビーではウイングとして活躍し、いったん加速すると爆発的な走力を誇りました。
林さんは千葉大を卒業後、女子医大の消化器病センターへ進みました。中山恒明先生が作ったセンターですね。
当時、千葉大の卒業生で千葉大に残らない人はとても少なかったので、林さんの選択はチャレンジ精神から来るものだったのでしょう。

さて、本書では近藤先生と林さんが、がんは治療か放置かの議論を闘わせています。
内容に関しては、一々コメントすると本書と同じ長さになってしまうので、それはちょっと無理。
全体としての感想を言うと、近藤先生は極論で、本当に正しいことを言っているか不明(本人は正しいと思っている)。
林さんは、患者に寄り添う人柄の優しさが発言の数々に表れており、「数字を並べて統計で相手をねじ伏せる」という説得のしかたを敢えてしていなかったように見えます。

ただ近藤先生が明らかに正しいと思えた部分もありました。
それは「胃がん」の発見数と死亡者数の乖離です。
患者が年々増えているのに、死亡者がずっと横ばいであるという現実。
もし、発見者の増加が検診のお陰であるなら、死亡者が減っていないのだから検診は意味がないという結論になります。
この理屈は小児がんの神経芽腫マススクリーニングが中止に至った経緯にも共通します。
あくまでも検診で発見者が増えたと仮定した場合です。

逆に近藤先生の論理が危ういのは、以下の点です。
がんというのは、発生部位によってバイオロジーがまるで異なり、同じ発生部位であってもリスク分類によって治療戦略がまるで変わってきます。しかし近藤先生はあまりにも「がん」を一まとめにして語りすぎているように思えます。

それにしても成人のがんというのは、小児がんに比べてはるかに研究が遅れていると思います。
もし「がんもどき」というものが存在するなら、それを分子生物学的にそのメカニズムを証明すべきです。
神経芽腫には自然退縮するもがあり、その仕組みは明確に解明されています。
おとなのがんは数が多すぎるために、治療方法もバラバラ、統計のとり方もバラバラという感じではないでしょうか?
ぼくは肝芽腫(小児の肝臓がん)のグループスタディーの取りまとめをやっていましたから、日本で発生する小児肝臓腫瘍のほぼすべての治療経過と治療結果を知っていました。

そういう点から言うと、成人のがんというのは、百家争鳴のように発言する人によって意見がかなり異なるなという印象を持ちます。
こんなメジャーな病気なのに、あんがい医学の進歩が後れているなと言う印象を持ちます。

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