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「町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト」猪谷 千香2016年11月14日 22時29分51秒

町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト
岩手県紫波町の駅前をどうやって「作った」かを描いたノンフィクションです。
行政主導でもない、大手企業主導でもない、新しい発想による町作り、それは民間と行政の共同作業でした。
まだ、「地方創生」という言葉がなかった時期からの取り組みですから、紫波町の民と官の人たちが、志をかかげて取り組んだことが成功したわけです。
しかし、ガッツさえあれば成功するというものではありません。
その準備の過程を見ていると、地道な努力の積み重ねがいかに大事だったかがわかります。

この本のすぐれているところは、何と言っても分厚い「取材力」にあると思います。
10人以上の人にインタビューしたと書かれていますが、いったい、どれだけの時間、話を聴いたのかと思います。
聞く方もすばらしいけど、これだけのことを語ってくれた関係者もすごいと思います。

インタビューで聴いたことは、地の文章で表現するか、「 」の台詞で表現するか、作家としてはとても迷うところですが、そうした作業が実にうまく整理されていました。
ま、要するに文章がうまい。
こういうノンフィクションを読むと、自分も同じ経験をしてみたい(書いてみたい)と羨ましくなります。

地域開発やまちづくりに興味のある方ならば、紫波町の存在は有名なのかもしれません。
しかしぼくのように医療関係・科学関係のノンフィクションばかりを読んでいる人間には、まるで知らない世界でした。
(人によっては)一見地味に見えるこうしたテーマで、1冊の本を作り上げた編集者・出版社も見事だったと思います。

良質なノンフィクションは今の時代なかなか売れなかったりしますが、現在この本はAmazonでも1〜3週待ちのようです。
いい本が売れる、そういう当たり前の流れになって欲しいものです。
オススメの1冊ですので、ぜひどうぞ。