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ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃 (講談社現代新書) 小林 雅一2016年08月24日 21時36分21秒

ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃
こうした入門書は、全然知識のない人に対してある程度のレベルまで理解させる本と、大学院生の程度の知識のある人に対してかなり専門的なことまで理解させる本があります。
本書は、前者にあたります。
ゲノム編集の意義を明確に説明したり、AI 人工知能との関連を述べたり、グーグルやAmazonがゲノム情報をベースに次世代の科学を切り開こうとしていることを解説したりしている部分は、大変よく書けていると思います。
しかし、クリスパー・キャス9のメカニズムに関してはかなり物足りないというのが、実感です。

ゲノム編集を説明するにあたって、KOマウスと何が違うのかを説明する必要があるというのが以前からぼくの考えでした。
本書ではそれが書かれていますが、もっと図を使うなど工夫があってもよかったのでは?
あの説明で一般の方は理解できるのでしょうか?

そもそもゲノム編集はサイエンスとして「応用科学」なのですから、DNAの構造から説明してまったく分子生物学の知識のない人に理解させるというのは難しいのではないでしょうか?

そのあたりは、ライターとエディターが話し合ったと思いますが、戦略としてはうまくいっていないというのがぼくの感想です。
そういう意味では、この本は「現代新書」ではなく「ブルーバックス」で書かれるべきだったと思います。
いや、それとも「現代新書」だからこういう作りになっているのかな。

それにしても、日本にはなぜアップルやグーグルやAmazonがないのでしょうか?
歴史のせいでしょうか? 文化のせいでしょうか?
日本は少子超高齢化の道を辿っていますが、先進国ではすべて同じ問題を抱えています。
一方で、後開発国では人口の増加・食糧問題と貧困化が進行する可能性があります。
地球単位で「人類」という生き物を見ると、果たしてあとどれくらい生き延びることができるのか疑問を持たざるを得ません。

しかしそうした問題は、ビッグデータ・AI・ゲノム編集で解決への道が拓かれる可能性があります。
でもそこに日本が関われない(可能性が高い)のはなんとももどかしいと感じます。
高速道路ばっかり作っているようじゃ未来はやってきません。