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「18トリソミーの会」への寄稿(4)2015年09月07日 20時05分13秒

4. さらに危険な着床前スクリーニング

体外受精させた受精卵の染色体の情報を、ほぼ全領域にわたってチェックする着床前スクリーニングが、不妊症に対して妊娠率の向上につながるかどうかを調べる臨床研究として、2016年から始まると日本産婦人科学会が発表した。

着床前スクリーニングは、何か一つの重篤な疾患について調べるのではなく、すべての染色体異常をふるい分けるという命の選別の面が極めて強い。それゆえ、学会は禁止にしていた。ところが新型出生前診断が臨床研究として行われるようになった以上、着床前スクリーニングが認められないのはおかしいという意見が出るようになった。しかしこれは本末転倒の議論である。

不妊治療を受けるカップルは子どもを授かることに必死になっており、受精卵を選別することを冷静に立ち止まって考えることなどは、とてもできないはずだ。完璧な染色体を持った受精卵をひたすら求めて胚移植をすることを希望するだろう。そうした過程で、不妊治療の目的であれ18トリソミーの受精卵が排除されれば、検査を受けるカップルの心の中に18トリソミーに対する差別感情が芽生える不安が極めて大きい。

仮に着床前スクリーニングの有効性が確認されれば、次は倫理性が厳しく問われることになる。倫理面を後回しにして、まず有効性を調べるというのもどうかと思うが、医学界は今から国民と共に議論を深める必要がある。

不妊症に対する新しい治療法の開発は、優性思想と完全に一線を画した方法で行われるべきだが、このままで優性思想が勢いを増す恐れが強い。そういう時代が来ないことを切に願う。

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