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「18トリソミーの会」への寄稿(2)2015年09月04日 18時19分41秒

2. 治療差し控えから積極的治療へ

では、実際に18トリソミーの赤ちゃんが生まれてきたら、医者はどうするべきか? 1990年代までは治療の手が差し延べられることはなかった。NICUの片隅で放置されていたと言っても過言ではない。小児外科医も手術しようとはしなかった。小児外科医の倫理観からすると、短命の運命にある子どもに対して手術をおこなうのはむしろ非倫理的という考え方が強かった。なぜならば、手術とは一種の暴力であり、暴力が許されるためには治療を受けた子どもが成人まで育っていけるということが求められていたからだ。

潮流が変わったのは2000年代に入ってからであろう。私の友人の小児外科医は、親の会の結成の影響が強かったと言った。だが、別の友人である新生児科医は、親の会を意識したことはほとんどなく、実際問題としてそれまでは日本中のNICUのベッドが慢性的に不足しており、18トリソミーの赤ちゃんまで手が回らなかったのが実情だと述べている。

新生児科に施設的・人的なパワーが増すと、18トリソミーの赤ちゃんに対する治療が少しずつ進んだ。食道閉鎖という小児外科医にとって大がかりな手術も少しずつおこなわれるようになった。その結果わかったことは、18トリソミーは従来言われているほど短命ではなく長期に生きる子もいること、そしてたとえ数カ月の命であっても家族と貴重な時間を共に過ごせるということであった。外科疾患を合併した18トリソミーの赤ちゃんに手術を加えなければ、数カ月すら生きられないことは言うまでもない。

現在、日本全国の小児外科施設の中で、どれくらいの施設が18トリソミーに合併した食道閉鎖の手術をおこなっているか明らかでない。ただ、2014年に開催された日本小児外科学会・秋季シンポジウムはテーマが「小児外科と倫理」であり、染色体異常児の外科手術について多数の発表があった。治療の流れは確実に変わってきており、家族の気持ちを尊重して、過大侵襲にならない外科治療をやっていこうという機運が生まれている。

しかし問題はこういう学会で発表をしない施設である。私は個人的に、「18トリソミーに合併する食道閉鎖は一切、手術しない」という方針を取っている日本でトップレベルの小児病院が存在することを知っている。看取りだけをおこなう医療を緩和ケアと呼ぶこともあるが、私はこの言い方に違和感を覚える。本来、緩和ケアとは、がんの末期の子どもなどに少しでも苦痛がないようにあらゆる手段を尽くすことを言う。18トリソミーに合併した食道閉鎖に対して胃瘻手術すらしないことは、単なる治療の差し控えである。緩和ケアという美しい言葉で本質を見えなくしてはいけない。

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