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「葬送の仕事師たち」井上 理津子2015年07月04日 21時26分11秒

「葬送の仕事師たち」井上 理津子
読みながらいろいろなことを考えてしまった。

ノンフィクションの面白さ・難しさは、どこまで「自分」を書くかにあると思う。
井上さんの「最後の色街・飛田」では、それがすごくうまかった。
飛田の街をなかなか取材できない自分がノンフィクションになっていた。
今回の本も取材の難しさはあったと思いますが、葬送の仕事についている人はたくさんいますので、地道にやっていけば本になる訳です。
だから「最後の色街・飛田」とは、味わいのまったく異なった本になっていると感じます。
文体も少し違う印象があります。

そしてノンフィクションでも、科学論文でもそうですが、読み物が一番重要なのは、「目的」にある。
だけど、この本には、なぜ葬送の仕事師たちを取材したかが「目的」として書かれていない。
そういう意味で言うならば、後書きの「前半」を先頭に持ってくる方が良かったと思います。

で、さらに言うと、「葬送」という仕事を解説したかったのか、「葬送」にかかわる人の人間をノンフィクションとして描きたかったのか、それがよくわからなかった。

現在、ベストセラー中なので、葬送に興味のある人はたくさんいるのでしょう。
そういう点では、井上さんは読者の心をくみ取っているのかもしれない。
だから尚のこと、「前書き」を充実させて欲しかった。