短期間に複数の患者さんがお亡くなりになったとして、メディアに取り上げられています。
また学会からも声明が出されたりしています。
一般の人たちにはなかなか理解しづらいかもしれませんが、この世の中には「命がけ」でおこなう手術もあります。
その代表例が肝臓移植です。
神戸の田中先生は生体肝移植の日本の第一人者、いや、世界の第一人者です。
ぼくも千葉大で一度だけ一緒に手術をさせて頂いた経験があります。
この世界には「神の手」と称される外科医がうじゃうじゃいますが、それはまったくの作り話です。
すべて「自称」であり、ブラックジャックは存在しません。
ぼくは自分より手術の上手な外科医を見た経験がありません。
しかし、自分のことを「神の手」なんて思ったことは一度もありません。
外科医とはただひたすらに修練を積み上げて、ちょっとずつ手技を正確に素早くしていく仕事です。
田中先生の手術は、しかしながら、やはり見事としか言いようのない技術でした。
あれから10年以上経っていますので、現在はどうか知りませんが、あれほど「洗練された」指さばきの外科医はほかに知りません。
千葉県がんセンターで起きた死亡事故と一緒にしてはいけないでしょう。
なぜならば、千葉県がんセンターでやっていた手術は、外科医が10年修練を積めば、誰でも安全におこなうことができるものばかりだったからです。
それを腹腔鏡という難易度の高い方法を敢えて選択して、手術死を何例も引き起こしたのですから、外科医たちの責任は相当重いとしか言いようがありません。
いや、ぼくだったら1例でもそういうことがあったら、メスを捨てています。
一方、肝臓移植は、移植をしなければすぐにでも命が危ないという患者がいくらでも含まれています。
手術自体も極めて難しいし、患者の負うリスクも大変高い。要するに、手術前から患者さんは瀕死の重症なんです。
もちろん、術後に患者がお亡くなりになったことに関して検証は必要ですが、神戸の移植手術を、そこらの医療事故を同列に論じることに大変強い違和感を感じます。
田中先生が世界中でどれだけたくさんの人間の命を救ったか、メディアの方々はちょっと調べてみてください。
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