アクセスカウンター
アクセスカウンター

「なんといふ空 」(中公文庫) 最相 葉月2014年03月23日 21時45分23秒

なんといふ空
このエッセイには良い点がたくさんあって、こんな文章を自分も書けたら良いなと思うのですが、ぼくにはそういった才能が全く無いのでとても無理。
ただひたすらため息をつくように、「ああ、いいな」と思いながら読了しました。

短い文章の中に「知識」も「経験」も「感性」も凝縮した形ではいっています。
惜しげもないという表現がいいのかも。

第一話の「わが心の町、大阪君のこと」もよかったけど、ぼくの心に響いたのは「ふくろふはふくろふ」。
切ないんですよね、筆致が。
大きく揺さぶるんじゃなくて、コツコツと叩くように、心に入ってくる。その感じが何ともいい。

最後の文が特によかったですね。
「三十五回めの春が来てようやく、自分を少しだけ肯定できるようになった。」

素晴らしいじゃないですか。

それにしてもこういう書籍が絶版になってしまうというのは、どういうことでしょうか。
出版社の経済の論理はぼくにはよくわかりませんが、こういった本こそデジタルにならないのでしょうか?
本当に残念です。

「なんといふ空」を書いてからもう13年。
今なら最相さんはどういうエッセイを書くでしょうか?
ぜひ読みたいですね。