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「歪んだ忌日」西村 賢太2013年07月01日 22時13分38秒

歪んだ忌日
西村さんの私小説の最大の魅力は「文章」だと過日書きましたが、内容に関して言えば、クライマックスで爆発するDVの暴言・暴力といったある意味誰でも思いつくような題材よりも、日常の中にあるどうでもいいような些細なことに細かく意味をくっつけて長々と書く、その粘着的な姿勢が何とも良いと思います。

たとえばこの短編集では、秋恵が拘るベンチ。あんなものをモチーフにしてよくぞまあ、何でもない生活の一場面を私小説に仕上げられるなと感心します。
そして中学卒業後の貫太が、金に窮する場面。金に対する細かい計算・打算・取らぬ狸の皮算用が延々と描かれます。

それが読んでいて本当に面白い。引き込まれるように読んでしまう。書いている本人はどうなんでしょうか?
これを書けば読者が面白がるとちゃんと予測しているんでしょうか?そこが何とも不思議。

と言うわけで、今夜は西村さんの最新作を読みました。